
眠れるようになった。
デスクワークで長時間の座り姿勢が続くことが多く、慢性的な身体の疲労やこりを感じながらも、仕事に支障をきたさないよう過ごしてきた。しかし、ここ数年、起床時に背中や腰を中心とした身体の痛みが気になるようになり、その症状が次第に強まることが増えてきた。特に朝起きた直後は、身体がこわばり、思うように動けないこともある。
痛みの程度には波があり、ひどい時には仕事や日常生活にも影響を及ぼすほどであった。しかし、不思議なことに、病院を受診しても特に明確な原因はわからず、医師からは「様子を見てみましょう」と言われるだけであった。実際、時間の経過とともに痛みは自然と軽減し、数日から数週間でほぼ気にならなくなることもあったため、大きな病気ではないと考え、その都度やり過ごしていた。
しかし、このような症状が繰り返されるうちに、「一時的に良くなっても、また再発するのではないか」「このまま年齢を重ねると、さらに悪化するのではないか」という不安が募るようになった。さらに、睡眠の質にも問題が生じていた。痛みがあるせいか、夜中に何度も目が覚めてしまい、熟睡できている実感がない。朝起きたときには、しっかりと眠ったはずなのに疲労感が抜けておらず、日中もだるさを感じることが増えていた。
このまま放置しても根本的な解決には至らないと考え、自分の身体の状態をしっかりと理解し、原因を知りたいと思うようになった。また、症状の改善を目指し、根本的なケアを受けたいという思いも強まっていた。そこで、インターネットや知人の紹介を通じて様々な治療法を調べるうちに、カイロプラクティックに関心を持つようになった。そして、当院の施術が身体の根本的なバランスを整えることを重視していると知り、「ここでなら原因を見つけてもらえるのではないか」「長年悩んできた痛みや不調を改善できるかもしれない」と考え、来院を決意した。
左仙腸関節周囲の浮腫
骨盤の可動制限
上部頚椎の可動制限
レントゲン評価では、腰の椎間板の段階は慢性的なD3レベルが確認され、初期集中期の段階では週2回のケアを提示したが、仕事が多忙で週1回のケアから開始することとした。
3週目(3回目のアジャストメント)には、今週は起床時の痛みなし。 昨日だけ寝れたとのこと
7週目(6回目のアジャストメント)には、起床時のこわばりや痛みも引き続き落ち着いている。夜もぐっすり眠れるようになった。
21週目(10回目のアジャストメント)には、1か月間を空けて経過を見ても体調が落ち着いて、仕事と日常生活に問題なし。
現在は、ほとんどの症状が落ち着いたが、身体のメンテナンスとして1~2か月に1回の間隔でカイロプラクティックケアを続けることとした。
今回のケースでは、左仙腸関節と第一頸椎に明らかな可動域制限が確認された。仙腸関節と第一頸椎はいずれも副交感神経支配の部位であり、これらの可動域制限が副交感神経の働きを低下させ、交感神経が過剰に優位な状態を引き起こしていたと考えられる。
体表温度検査では、上部頸椎と骨盤部に左右の温度差が認められ、筋緊張も右胸鎖乳突筋および腰部起立筋に顕著であった。特に腰部起立筋の過緊張は、骨盤の傾きや仙腸関節の可動域制限と密接に関連しており、これが慢性的な腰痛の要因となっていたと考えられる。また、レントゲン評価では腰椎椎間板がD3レベルの慢性状態であり、長期間にわたって腰椎に負担がかかっていたことが示唆された。
治療開始後、徐々に症状の改善がみられた。3回目のアジャストメント後には、起床時の痛みが消失し、一部の日では睡眠の質も向上した。これは、骨盤と頸椎の調整によって副交感神経の働きが改善し、交感神経優位の状態が緩和されたことによる影響が考えられる。さらに、6回目のアジャストメント時点では、起床時のこわばりや痛みが引き続き落ち着き、夜もぐっすり眠れるようになった。これは、副交感神経の働きが安定し、睡眠時に適切なリラックス状態を維持できるようになった結果といえる。
長期的な経過として、10回目のアジャストメント時点では、1か月間ケアの間隔を空けても体調が安定し、仕事や日常生活に問題がなくなった。これにより、慢性的な腰痛や睡眠の質の低下が、単に筋骨格系の問題だけでなく、自律神経のバランスの乱れとも深く関係していたことが示唆される。
今回のケースは、骨盤と頸椎の調整が自律神経バランスの改善を通じて、腰痛や睡眠の質向上に大きく寄与することを示した良い例といえる。
執筆者塩川カイロプラクティック治療室金城 寿生
1989年、沖縄県生まれ。柔道整復師の免許取得後に上京。接骨院やクリニック勤務を経験。2022年東京カレッジ・オブ・カイロプラクティック(旧豪州ロイヤルメルボルン工科大学 日本校)卒業。塩川スクールにてGonstead seminar修了。研修を経て塩川カイロプラクティック治療室に入社。勤務しながら、インストラクターとしてカイロプラクター育成に携わっている。