今回のケースでは、長期間のストレスにより自律神経が乱れ、めまい・動悸・睡眠の質の低下といった症状が主訴としてみられた。さらに、骨盤および上部頚椎の可動域制限と体表温度検査における顕著な反応が確認されたことから、この部位での神経に負担がかかっていることが強く疑われたため、副交感神経に絞ってアプローチを開始した。
自律神経は、交感神経と副交感神経のバランスによって調節されている。上部頚椎、特に第1頚椎は、副交感神経の重要な経路である迷走神経に大きな影響を与える。迷走神経は、心拍数の調整、血圧(特に拡張期血圧)の安定、消化機能の促進などを担っており、この神経の働きが阻害されると、動悸や血圧の変動、消化不良、さらには睡眠障害といった症状を引き起こすことにも繋がる。
また、平衡感覚を司る内耳神経(前庭神経)も上部頚椎の影響を受けやすく、頚椎での神経の働きが低下することで、めまいの発生要因となる可能性がある。今回のケースにおいてもストレスによる交感神経の過活動が続いた結果、長期間にわたる神経系への負担がめまいや動悸の原因となったと考えられる。
さらに下痢の症状もみられた。消化管の運動は副交感神経によって促進される一方で、交感神経が優位になると腸の蠕動運動が抑制され、消化・吸収機能が低下する。その結果、大腸での水分吸収が不十分になり、下痢を引き起こしやすくなる。長期間のストレスによって交感神経が過剰に働き続けたことが消化機能の乱れにも影響を及ぼしていたと推測される。
アジャストメントによって、サブラクセーション(根本原因)が取り除かれ、自律神経のバランスが整った結果、症状の改善に繋がった考えられる。
長年、動悸やめまいに悩んでいたが、神経の流れを整え、回復力を高めることの重要性が確認できる症例である。