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胸の不快感を伴う自律神経失調症

胸の不快感を伴う自律神経失調症

頸の張りも落ち着いた

10代男性
主訴
動悸や食欲不振、胸の不快感
来院に至った経緯

小学生のころからアメリカンフットボールに打ち込み、活発に運動を行っていた。幼少期から運動量が多く、日常的に体を動かすことが習慣となっており、チーム活動にも積極的に参加していた。しかし、高校2年生ごろから、特に明確なきっかけもなく、突然動悸や胸の不快感を感じるようになった。これまで経験したことのない症状であり、初めのうちは一時的なものだと考えていたが、症状は徐々に頻繁に現れるようになり、日常生活にも影響を及ぼすようになっていった。

さらに、動悸や胸の不快感に伴い、食事をとろうとすると気分が悪くなり、次第に食欲が大きく減退していった。これまで問題なく食べていた量の食事がとれなくなり、次第に1日1〜2食、しかも少量をなんとか摂取できるかどうかというほどに食が細くなった。この食欲不振の影響で体重も減少し、以前のような活力を感じられなくなった。体力の低下を実感するようになり、それまで熱心に続けていたアメリカンフットボールの練習についていくことが難しくなっていった。やがて競技を続けること自体が困難になり、ついにはアメリカンフットボールを辞める決断をせざるを得なかった。

運動をやめた後は、学業に力を入れるようになったが、体調が改善することはなかった。大学受験の勉強を本格的に進めるようになっても、動悸や胸の不快感は相変わらず続き、食事量も回復しなかった。運動をしなくなったことで体を動かす機会が減り、体力の低下をますます実感するようになった。

大学生になってからも同じような症状が続き、改善の兆しが見られなかった。特にアルバイト中など、緊張する場面では動悸や胸の不快感が強くなり、仕事に集中できないこともあった。接客業務の際には特にその症状が顕著であり、突然の動悸によって焦りや不安を感じることが多くなった。また、勉強中と同様に、アルバイト中の姿勢も悪くなりがちで、長時間の立ち仕事やデスクワークの後には肩や首のこりが強まり、疲れが抜けにくい状態が続いていた。これらの症状が重なり、日常生活全般において負担が大きくなっていた。

このような状態が数年にわたって続いたため、家族も心配するようになった。そんな折、ご家族が当院のことを知っており、一度専門的な施術を受けてみることを勧めた。本人も現在の症状を少しでも改善したいという思いがあり、試しに診てもらおうと考え、来院に至った。

初診の状態
  • 01

    右後頭下の浮腫

  • 02

    右胸鎖乳突筋の過緊張

  • 03

    仙骨周囲のスポンジ状の浮腫

経過と内容
初診時の状態では、上部頸椎と後頭骨には明らかな可動域制限があった。体表温度検査では、上部頸椎、胸椎と骨盤部に明らかに左右の温度の誤差が確認された。

初期集中期の段階では学校の都合上、週1回のペースからケアを開始した。

4週目(5回目のアジャストメント)には、動悸や胸の不快感、食事をとろうとすると気分が悪くなる頻度が減ってきたが波はある。

6週目(6回目のアジャストメント)には、最初のころより調子の良い日が多いが好不調の波は続いている。第1頸椎の可動性は向上してきたが、後頭骨の可動性減少と右胸鎖乳突筋の緊張はまだ見られる。本日より後頭骨へ移行。

10週目(9回目のアジャストメント)には、バイト中や食事中に気分が悪くなることは無くなった。動悸と胸の不快感も1週間の内に1回あるかないかぐらいに頻度が減った。右頸を右に倒しても問題なし。右胸鎖乳突筋の緊張も軽減してきた。

17週目(13回目のアジャストメント)には、体表温度の左右差も落ち着いてきた。日常生活も問題なく、食事も1日に2回食べれるようになってきた。バイトや遠方の運転も大丈夫だった。

現在は症状が落ち着いたが、身体のメンテナンスとして定期的なカイロプラクティックケアを続けている。


考察

今回の症例は上部頸椎、特に後頭骨の影響により三叉神経という副交感神経が問題だったと考えられる。

カイロプラクティックでの動悸へのアプローチには、迷走神経という副交感神経に問題が考えられます。迷走神経の働きは、咽頭・喉頭の粘膜・嚥下・発声・気管・食道・胃・小腸などの運動力の促進、消化腺の分布、心拍数の抑制を行います。

迷走神経とは第10脳神経と呼ばれ、脳から始まり、顔面、中耳、首、咽頭、気管支、心臓にも分布しており、これらの臓器に分布している迷走神経に問題が生じると、拡張期血圧の上昇(収縮期は正常)、呼吸が浅くなり、心拍が乱れ動悸の症状に繋がります。

また迷走神経は、胃、小腸、大腸のなどの一部の臓器に分布し、不随意筋の動きを支配しています。

これらの臓器に繋がっている迷走神経に問題が生じると、黒色の便(胆汁の分泌過剰)、黄疸、胆石、肝炎、胆のうの問題、白色の便(すい臓からの脂肪分解酵素の分泌過剰)、低血糖症(インスリン分泌過剰)、消化性潰瘍、S状結腸の狭窄、回腸、盲腸弁の狭窄の原因となります。

今回の症例も三叉神経に関係する上部頸椎にサブラクセーションの所見が確認された。可動性が顕著だった第1頸椎のアジャストメントから経過を診ていたが、可動性増加が確認されたが、動悸や胸の不快感に大きな変化は見られなかった。

第2選択肢の後頭骨は可動性減少が残存し、右胸鎖乳突筋の過緊張も残存していたため、第1頸椎から後頭骨に移行した。その後、動悸や胸の不快感・食事やバイトでの気分不良も出なくなった。

また骨盤部も副交感神経の領域なので、上部頸椎と同じ自律神経の領域に絞ってアジャストメントを定めたことも回復に繋がったと考える。

同じ関節でも1つ部位が違うだけで、身体の反応は大きく変わる。そのためにも検査によって問題となるサブラクセーションを特定することが大事になってくる。またサブラクセーションを特定するために、アジャストメント後の身体の変化・第1、2選択肢とアプローチを想定することも必要になってくる。改めて検査や変化・ケア計画の重要性を実感した症例でした。

金城 寿生

執筆者塩川カイロプラクティック治療室金城 寿生

1989年、沖縄県生まれ。柔道整復師の免許取得後に上京。接骨院やクリニック勤務を経験。2022年東京カレッジ・オブ・カイロプラクティック(旧豪州ロイヤルメルボルン工科大学 日本校)卒業。塩川スクールにてGonstead seminar修了。研修を経て塩川カイロプラクティック治療室に入社。勤務しながら、インストラクターとしてカイロプラクター育成に携わっている。

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