左腕にもしびれが出たりする
子供の頃から野球に打ち込み、小学校から高校までずっとそのスポーツを楽しんできた。高校を卒業後、社会人になってからはデスクワークの仕事に就き、長時間のパソコン作業に追われる日々が続いていた。それでも、週に一度のジムや、たまに草野球を楽しみながら、体を動かすことを忘れないようにしていた。
ところが、ここ最近、首に違和感を感じるようになった。初めは軽いものだったのですが、次第に痛みが増してきて、首を動かすたびに「ポキポキ」と音が鳴るようになった。姿勢が悪くなっている自覚もあり、デスクワークが多いため、どうしても体が前かがみになりがちだった。その影響か、左肩にも時々痛みを感じるようになり、腕にピリピリとしびれが出ることもあった。首の違和感が続くと、痛みがひどくなり、たまに頭痛にも悩まされるようになった。
一度、自分でストレッチやマッサージを試みましたが、なかなか改善せず困ってため、インターネットで調べた結果、当院のことを知り、思い切って来院を決意した。肩こりや首の痛みに悩む多くの人が来院していることを知り、自分もここで解決できるかもしれないと期待を胸に、来院に至りました。
右環椎横突起周囲の浮腫
下部頸椎部の可動制限
左仙腸関節の可動制限
初診時の状態では、左の仙腸関節には明らかな可動域制限があった。体表温度検査では、骨盤部と上部頸椎と下部頸椎に明らかに左右の温度の誤差が確認された。また左上後腸骨棘上端と第一頸椎左横突起に強い浮腫が確認され、腰部起立筋と頚部胸鎖乳突筋は過緊張の状態であった。また下部頸椎には可動性亢進時に見られやすい横シワも確認された。
レントゲン評価では、腰の椎間板の段階はD2/3レベルで過前弯で反り腰が確認された。首の椎間板の段階は慢性的なD3レベルが確認され、首の前弯カーブ(前カーブ)は消失してストレートネック傾向となっていた。
初期集中期の段階では週1回のケアから開始した。
4週目(5回目のアジャストメント)には、頭痛は落ち着いており左腕まで鈍痛が出ることはなくなった。
8週目(7回目のアジャストメント)には、左肩の痛みも出ることはなくなり顔を上げたりしても首の痛みが出なくなってきた。仕事が続くと首周りが張る感覚はある。
17週目(10回目のアジャストメント)には、仕事が続いても嫌な感覚の張りは感じなくなった。また首を動かした時のポキポキという頻度も日常生活で大幅に頻度が減少した。
日常生活に支障が出なくなったので、健康維持のためメンテナンスに移行した。
検査では、下部頸椎と骨盤部に強い反応がみられた。首は全体的に熱感を持っており、強い炎症が起こっていたと考えられる。今回のケースでの炎症はそれほど悪いものではなく、患部の代謝を高めて治癒しようとした結果だと考えられるが、左上腕部まで鈍痛やしびれが出ていたことを考えると患部にはかなりの負荷が掛っていたと考えられる。
人間の痛みの感覚は「正常→痛み→痺れ→麻痺」の順番で進行していくが、回復過程では「麻痺→痺れ→痛み→正常」の順番で回復していく。また、その回復過程では患部が重くなったり、筋肉痛のように感じる場合もある。
頚部はレントゲン評価でも6段階中、3段階目であるD3レベルと慢性的であった。可動亢進している頸椎もあり、骨格が不安定になったことで頭の重さを支えられずに、首肩の筋肉をガチガチに固めて頭部の重さを支えようとした結果の頚部の張りだったと考えられる。
筋肉の張りは自律神経のバランスを乱し、交感神経が過剰に働くことで体全体が過緊張を起こして発症するケースもある。そのような場合であれば、副交感神経支配の部位に絞ってアプローチを行う必要がある。今回のケースの頚部痛は、自律神経の問題ではなく、頚部のみならず体の土台である骨盤部の乱れなど筋骨格系の乱れが原因であったと考えられる。
骨盤部には仙腸関節というものが存在している。人間には必ず補正作用があり、どちらかの仙腸関節の動きが悪くなると、反対側の仙腸関節は過剰に動いてしまう。
すると歩いているだけで腰部に捻じりの動作が加わるようになってしまう。腰の椎間板も慢性的なD2/3レベルであったが、骨盤部の制限から腰部の神経にも多大な負荷が掛っていたと考えられる。
アジャストメントによってサブラクセーション(根本原因)が取り除かれたことで、左腕の痺れや首の張り、慢性的な頚部痛の改善に繋がったと考えられる。あらためて神経の流れを整えて体の情報を脳へ届けてあげることの重要性が分かる症例である。
執筆者塩川カイロプラクティック治療室金城 寿生
1989年、沖縄県生まれ。柔道整復師の免許取得後に上京。接骨院やクリニック勤務を経験。2022年東京カレッジ・オブ・カイロプラクティック(旧豪州ロイヤルメルボルン工科大学 日本校)卒業。塩川スクールにてGonstead seminar修了。研修を経て塩川カイロプラクティック治療室に入社。勤務しながら、インストラクターとしてカイロプラクター育成に携わっている。