

肩の動きへの不安が軽減し、日常動作を気にせず過ごせるようになりました!
現場関係の仕事に長く携わってきたが、管理職になってからはデスクワーク中心の生活が10年ほど続いていた。その頃から首や肩の張りを感じることが増え、特にここ数年は右側の肩に強いコリやハリを自覚するようになっていた。以前、一度左肩が四十肩・五十肩のような状態になったことがあり、その際はマッサージで対処していたため、今回も同じように様子を見ていた。
しかし今回は、右肩の違和感が次第に強くなり、腕を横から上げていく動作で引っかかるような感覚が出るようになった。肩を意識せずに動かすことができず、途中で止まってしまう感じがあり、最後までスムーズに上げきれない状態となっていた。痛みが強く出るわけではないものの、「これ以上動かすとまずそうだ」という不安が先に立ち、無意識に動きを制限している自分に気づくようになっていた。
腕にしびれが出たことは一度もなかったが、服を着たり脱いだりする際や、上着に袖を通す動作で右肩の動かしにくさをはっきりと感じるようになり、日常生活の中で肩の存在を常に意識する状態となっていた。首の動きも伴って制限されている感覚があり、上を向く動作や右側を振り向く際に、肩から首にかけて突っ張るような違和感が出ることが増えていった。
これまでも今回の症状に対して、いくつかの施術院を試しに受診したことはあったが、2回ほど通うと通院をやめてしまい、明確な変化を感じるまでには至らなかった。過去には整体やカイロプラクティックを受けた経験もあったが、その時々の対処にとどまり、右肩の動かしにくさが根本的に変わったという実感はなかった。
右肩の痛みと可動域制限が続く中で、「このままでは肩の動きがさらに悪くなるのではないか」「年齢とともに戻らなくなるのではないか」という不安が強くなっていった。日常動作に支障が出始めていることもあり、肩だけを一時的に楽にするのではなく、なぜ右肩にこのような状態が起きているのかを含めて、身体全体の状態を一度きちんと確認したいと考えるようになり、当院に来院された。
頸部全体の過緊張
頸部左右側屈時の極端な可動域制限
右仙腸関節の可動域制限
初診時の状態では、下部頸椎と右仙腸関節には明らかな可動域制限があった。体表温度検査では、下部頸椎と骨盤部に明らかに左右の温度の誤差が確認された。また隆椎周辺と右上後腸骨棘上端内縁に強い浮腫が確認され、頸部全体と腰部起立筋は過緊張の状態であった。また、隆椎周辺は明らかな熱感を帯びており、患部が炎症している状態であった。
レントゲン評価では、椎間板をD1~D6という6段階で評価していく。腰の椎間板の段階は6段階中4段階の慢性的なD4レベルで重度の骨盤の傾きや腰椎に椎骨の変性が確認された。首の椎間板の段階は6段階中3段階の慢性的なD3レベルが確認され、首の前弯カーブ(前カーブ)は消失してストレートネックとなっていた。
初期集中期の段階では週2回のケアを提示したが、遠方からの来院だったため、無理のない範囲で週1回のケアから開始した。
2週目(2回目のアジャストメント)には、首から右肩にかけて常に感じていた張り感がわずかに軽減し、肩を動かした際の引っかかり感が以前よりも弱まっていることを本人が自覚していた。腕を横から上げる動作では、まだ可動域の制限は残っていたものの、「動かし始めが少し楽になった」との感想があった。
7週目(6回目のアジャストメント)には、右肩の可動域に変化がみられ、服の着脱時に感じていた不安感が軽減していた。特に、腕を途中まで上げた位置で止まってしまっていた動作が、以前よりもスムーズにつながるようになり、動作中の警戒心が弱まってきていた。首の可動域についても、上を向く動作や右後方を振り向く際の突っ張り感が徐々に軽減していた。
12週目(10回目のアジャストメント)には、日常生活の中で右肩の存在を強く意識する場面が減少していた。肩を動かす際に「これ以上動かすと痛みが出るのではないか」という不安が薄れ、可動域そのものも安定してきていた。頸部から肩にかけての筋緊張も以前ほど強くは感じなくなり、仕事中の姿勢保持も楽になっていると本人から報告があった。
17週目(14回目のアジャストメント)には、右肩の可動域制限は日常生活においてほとんど支障を感じないレベルまで改善していた。腕を横から上げる動作でも途中で止まる感覚は消失し、動作全体が自然につながるようになっていた。首や肩の張りも軽度となり、以前のように症状を意識し続けることはなくなっていた。
現在は、右肩の痛みおよび可動域制限はほぼ落ち着き、日常生活や仕事に支障のない状態が保たれている。今後も症状の再発を防ぎ、神経機能の安定した状態を維持するため、身体のメンテナンスとして定期的なカイロプラクティックケアを継続している。
今回の右肩の痛みと可動域制限は、下部頸椎から伸びる神経への慢性的な負荷が主な原因であったと考えられる。
肩関節そのものに明らかな外傷歴や炎症性疾患がないにもかかわらず、動作時痛や可動域制限が生じていた点から、局所的な筋や関節の問題だけでなく、神経機能の低下が関与していた可能性が高い。右肩の運動や感覚を支配する神経は下部頸椎から分岐しており、この領域に可動域制限や炎症反応が生じることで、肩関節の動きそのものに制限がかかりやすくなる。
初診時に確認された下部頸椎の可動域制限や隆椎周辺の浮腫、熱感は、神経に対する持続的な負荷が存在していたことを示している。神経への負担が続くと、脳はそれ以上の損傷を防ぐために、筋緊張を高め、関節の動きを制限する方向に調整を行う。この反応によって肩関節の動きは「構造的に動かない」のではなく、「神経的に動かしづらい」状態となり、可動域制限や痛みとして自覚されるようになる。
さらに、この下部頸椎の問題を単独で考えるのではなく、背骨全体の土台である骨盤部との関連を考慮する必要がある。骨盤部は背骨を下から支える基盤であり、この領域の安定性が失われると、脊柱全体のバランスが崩れやすくなる。実際に本症例では、右仙腸関節に明らかな可動域制限が確認されており、骨盤部の機能低下が長期間存在していたことが示唆される。
骨盤部が不安定な状態では、身体はその上に積み重なる脊柱を安定させようとし、代償的に頸部や胸部の筋緊張を高める。特に下部頸椎は、頭部の重さと体幹の動きをつなぐ重要な部位であるため、骨盤の乱れの影響を受けやすい。このような状態が続くことで、下部頸椎への負担が慢性化し、結果として右肩へ向かう神経の機能低下が生じていたと考えられる。
アジャストメントによって骨盤部と下部頸椎にかかっていた神経への負担が段階的に取り除かれていくと、過剰に高まっていた筋緊張は自然に緩和され、神経の伝達環境が整っていく。その結果、肩関節を動かす際の防御反応が解除され、可動域が徐々に回復していった。この回復が一気に起こるのではなく、段階的に現れた点は、神経機能が本来の働きを取り戻していく過程を反映したものといえる。
本症例は、右肩の痛みや可動域制限が局所の問題ではなく、骨盤部と下部頸椎に存在していたサブラクセーション(根本原因)による神経機能の低下が背景にあったことを示す症例である。神経機能に着目したアプローチによって、肩関節の機能改善が得られた点は、症状の本質を捉える重要性を示している。


執筆者前田カイロプラクティック藤沢院前田 一真
1982年、神奈川県生まれ。シオカワスクール在学中から塩川カイロプラクティックにて内弟子として学ぶ。塩川満章D.C.と塩川雅士D.C.に師事し、副院長まで務める。2023年に前田カイロプラクティック藤沢院を開院。一人でも多くの人にカイロプラクティックの持つ無限の価値を知っていただくため、カイロプラクターとして尽力している。またシオカワスクールでは現役講師を務めており、後任の育成にも力を入れている。