先天性の股関節変形症が原因だと診断された右脚の痺れが解消された!
半年前に自転車で走行中に左側から子供が飛び出してきて、それを避ける際に転倒して右腰を強打した。その日は、ぶつけた右腰が痛いなという程度だったが、翌朝起きると右脚に痺れが出ていた。
念のため整形外科を受診すると、右脚の痺れは先天性の股関節変形症によるものだと診断された。仕事がデスクワークのため、日ごろから腰痛もあったし、過去にはぎっくり腰も2度経験しているが、これまで右脚に痺れが出たことなど一度もなかった。
それを生まれつき股関節が変形していることが原因だと言われても、到底納得できるものではなかった。別の病院を受診してみたが何も処置してくれることもなく、痛み止めを処方されただけだった。
次第に右股関節や右鼠径部に強い痛みを感じるようになり、歩くことも困難になった。在宅ワークを許可してもらえたため仕事はなんとかできたものの、このままではマズいと思い、以前ぎっくり腰のときにお世話になった近所の整体に通うことにした。
右股関節周辺の歩けないほどの痛みは軽減したが、右脚の痺れはまったく変わらず、右股関節周辺の痛みも残ったままだった。6か月経っても右脚の痺れが変わらないことに恐怖を覚え、脳の精密検査も受けてみたがMRIやCT検査をしても異常なしだった。
40歳を過ぎたころから、手足の冷えを感じるようになったり、左顎から異音が鳴ったりするようになった。整体の先生にも呼吸が浅いですねと何度も指摘されて、これは体全体のメンテナンスをしなければとダメだというサインだなと思った。
そんなとき、お世話になっていたエステの先生から、ここの先生すごいから行ってみたらと紹介された。埼玉県在住だったが、信頼していたエステの先生からの紹介だったため、神奈川県藤沢市まで通ってみようと決意して当院に来院された。
右仙腸関節の可動域制限
右仙骨翼にスポンジ状の強い浮腫
腰部起立筋の過緊張
初診時の状態では、右の仙腸関節には明らかな可動域制限があった。体表温度検査では、骨盤部と上部頸椎に明らかに左右の温度の誤差が確認された。また右仙骨翼と第一頸椎左横突起に強い浮腫が確認され、腰部起立筋と頚部胸鎖乳突筋は過緊張の状態であった。
レントゲン評価では、腰の椎間板の段階は慢性的なD3レベルで重度の骨盤の傾きや過前弯で反り腰が確認された。首の椎間板の段階は慢性的なD6レベルが確認され、首の前弯カーブ(前カーブ)は消失してストレートネックとなっていた。
初期集中期の段階では週3回のケアを提示したが、遠方からの来院だったため週1回のケアから開始した。
3週目(3回目のアジャストメント)には、本人も感じるほど右股関節の可動域が増して、右鼠径部の痛みが軽減した。
5週目(5回目のアジャストメント)には、右脚の痺れが軽減し、右脚全体に筋肉痛のような重ダルさを感じるようになった。また右臀部に痛みを感じるようになった。
14週目(10回目のアジャストメント)には、右脚の痺れや右股関節周辺の痛みは、ほとんど感じなくなった。また左顎のクリック音は鳴らなくなった。
30週目(17回目のアジャストメント)には、手足など末端の冷えはほとんど感じなくなった。また、これまで本人は自覚症状がなかった呼吸が浅い問題も、深く呼吸ができていると感じるようになった。
現在は、ほとんどの症状が落ち着いたが、身体のメンテナンスとして定期的なカイロプラクティックケアを続けている。
今回の右脚の痺れは、右仙腸関節の可動域制限が原因だと考えられる。
元々、腰痛があったことやぎっくり腰も2回経験していることから、日常生活において腰部や骨盤部の神経に強い負荷が掛っていたものと考えられる。
それが自転車での転倒により右腰部を強打したことで、骨盤部の神経にさらなる負担となり強い運動病理を発生させ、右脚の痺れだけではなく右股関節や右鼠径部の痛みも発生させていたのだろう。
人間の痛みの感覚は、「正常→痛み→痺れ→麻痺」の順番で進行し、回復過程では、「麻痺→痺れ→痛み→正常」の順番で回復していく。また回復過程では、痺れが出ている部位全体に重だるさや筋肉痛のような症状が現れることがある。
今回のケースでは、顕著にその過程を辿り、途中右脚全体に筋肉痛のような重だるさや右臀部の痛みが出た。神経の回復と共に、右下肢全体の症状が軽減されていったと考えられる。
検査では、骨盤部と上部頸椎に強い反応がみられたが、どちらも副交感神経支配の部位となる。副交感神経にサブラクセーション(根本原因)があったことで、交感神経が過剰に働いていたと考えられる。
末端冷え性は交感神経が過剰に働いている人の特徴となる。交感神経の作用として、末梢の血管を閉じる役割があるが、その状態が長期間続いたことが末梢の血管が閉じたままとなり末端冷え性を発症していたと考えられる。
呼吸が浅い問題も交感神経が過剰に働くことで、体が常に過緊張の状態となり、呼吸が浅くなっていたと考えられる。
顎関節症もあったが、特に外傷もなく顎に違和感が出るケースに関しては上部頸椎の問題であるケースが多い。顎関節は人体の関節の中で、最も小さな関節の一つとなる。今回の顎関節症では、痛みはなく左顎からの異音が鳴っているだけだったため、そこまで慢性的ではなかったのだろう。そのため、上部頸椎の安定と共に顎関節への負担も解消されたと考えられる。
アジャストメントによってサブラクセーション(根本原因)が取り除かれ、骨盤部が安定したことで、右脚の痺れ、右股関節の痛み、右鼠径部の痛みの改善に繋がったと考えられる。
末端冷え性などの自律神経症状も出ていたが、神経の流れを整えて体の情報を脳へ届けることの重要性が確認できる症例である。
執筆者前田カイロプラクティック藤沢院前田 一真
1982年、神奈川県生まれ。シオカワスクール在学中から塩川カイロプラクティック治療室にて内弟子として学ぶ。塩川満章D.C.と塩川雅士D.C.に師事し、副院長まで務める。2023年に前田カイロプラクティック藤沢院を開院。一人でも多くの人にカイロプラクティックの持つ無限の価値を知っていただくため、カイロプラクターとして尽力している。またシオカワスクールでは現役講師を務めており、後任の育成にも力を入れている。