
ストレッチや運動をしても変わらなかった
長年デスクワークに従事しながらも、健康維持と自己鍛錬のために30年以上空手を続けてきた。体力には自信があり、大きな怪我や病気とは無縁の生活を送っていたが、数年前から空手の稽古後や長時間の会議で座り続けた際に、腰の痛みや左臀部、坐骨周辺に違和感を覚えるようになった。最初は軽いストレッチをすることで和らいでいたため、大きな問題とは考えていなかったが、次第にその痛みが繰り返し現れるようになり、日常生活の中で気になる場面が増えていった。
特にここ1年ほどは、明確な原因がないにもかかわらず、朝起きたときから腰のこわばりを感じるようになり、背中を伸ばそうとすると鈍い痛みが走るようになった。以前であれば、軽く身体を動かせばすぐに解消されていたが、最近では動き始めに時間がかかるようになり、ストレッチや運動を行ってもなかなか改善しなくなってきた。仕事中も同様で、デスクワークをしているうちに腰の違和感が増し、会議が長引くと立ち上がる際に強いこわばりを感じるようになった。空手の稽古では蹴り技や腰を捻る動作の際に引っかかるような感覚があり、思うように体が動かせないことが増えてきた。
このままでは趣味の空手だけでなく、仕事や日常生活にも支障をきたすのではないかという不安が募っていった。しかし、病院に行くほどの症状なのか判断がつかず、なんとなく様子を見続けていた。そうしているうちにも症状は少しずつ悪化し、朝の動き出しの辛さや、仕事終わりの腰の重だるさが日常になりつつあった。これまで自分なりにストレッチや運動を続けてきたが、根本的な改善には至らず、「このまま放置していて本当に大丈夫なのか」と考えるようになった。
そんなとき、インターネットで当院のことを知り、これまでの経緯や症状を専門的に診てもらえるのではないかと思った。慢性的な腰痛や坐骨周辺の痛みは、放置するとさらに悪化し、より大きな不調へとつながる可能性がある。自分ではどうにもならなかった痛みを改善するために、思い切って診察を受けてみようと決意し、来院に至った。
左仙腸関節周囲の浮腫
左腰部起立筋の筋緊張
上部頚椎の可動制限
レントゲン評価では、腰の椎間板の段階は慢性的なD5レベルで長期の慢性化が確認された。首の椎間板の段階は慢性的なD3レベルが確認され、首の前弯カーブ(前カーブ)は消失してストレートネックとなっていた。
初期集中期の段階では週2回のケアを提示したが、仕事の関係で週1回のケアから開始した。
4週目(5回目のアジャストメント)には、左坐骨周囲の臀部痛が落ち着いてきた。左股関節外旋時痛(-)、パトリック(-)。起床時のこわばりはまだ続いている。左仙腸関節が可動してきて左仙骨翼S2周囲に浮腫が限局してきたこともあり、S2PR‐Cに移行し2週後に経過確認とした。
8週目(7回目のアジャストメント)には、朝の腰のこわばりも軽減してきた。腰部屈曲制限なし。頚部痛も日常生活で問題なくなってきた。頚部伸展制限なし。
13週目(9回目のアジャストメント)には、朝のこわばりも落ち着き不安なく起床できるとのこと。腰部伸展制限なし。維持期に移行し1か月後に経過確認とした。
24週目(12回目のアジャストメント)には、その後も安定しているとのこと。身体のメンテナンスとして定期的なカイロプラクティックケアを希望のため、メンテンナンスに移行した。
今回の朝の腰部のこわばりの原因は、自律神経のバランスが乱れたことが最大の原因であったと考えられる。自律神経には交感神経と副交感神経の2つがあり、検査では副交感神経支配であるとC1と骨盤部の反応が強く見られた。
副交感神経サブラクセーションの特徴として、鋭い痛み(Sharp Pain)、早い痛み(Quick Pain)、痙攣性まひ(Spastic Paralysis)、筋硬直、両側の症状、臓器や腺の機能亢進などが挙げられる。今回の朝のこわばり・左臀部痛は筋硬直が特徴的でだった。
こわばりは代謝異常や過緊張の影響があるが、今回は副交感神経の活動が抑制され、交感神経が過剰に働くことにより、体が興奮状態になることで、自律神経が乱れることにより発生する。交感神経と副交感神経が切り替わることができず、交感神経が過剰に働いている状態で体が興奮状態にあり、こわばりが続いていたと考えられる。
副交感神経サブラクセーションのアジャストメントにより、交感神経の働きが落ち着いた結果、それらの症状が落ち着いたものと考えられる。
股関節の痛みなどがあると、AS/INや仙骨軸転、後方部の痛みであればL4/5があげられるが、今回の症例は自律神経の乱れによるものであり、症状でサブラクセーションを決めつけるのではなく、検査を基に特定することが重要なことを改めて感じた症例である。
執筆者塩川カイロプラクティック治療室金城 寿生
1989年、沖縄県生まれ。柔道整復師の免許取得後に上京。接骨院やクリニック勤務を経験。2022年東京カレッジ・オブ・カイロプラクティック(旧豪州ロイヤルメルボルン工科大学 日本校)卒業。塩川スクールにてGonstead seminar修了。研修を経て塩川カイロプラクティック治療室に入社。勤務しながら、インストラクターとしてカイロプラクター育成に携わっている。