
30年前から続く腰の痛みがあり、3週間前から工場勤務で立ったり屈むような姿勢を取ることがキツくなってきた。いつもであれば1週間もしないうちに治るのが、今回は治りが遅く、背中のほうまで痛みが広がるように悪化してきて、背筋を伸ばすことができなくなった。
ぎっくり腰は過去に5回くらいやっており、一番最後にやったのは6年前で、整形外科でレントゲンをみてもらったら、骨に異常はないため、湿布薬をもらって安静にしているよう言われた。
最も辛いのは動作痛で、しゃがみ姿勢から立つ時、座った姿勢から立ち上がる時に体を伸ばすと痛みが強く出る。仕事以外でもキッチンでの作業も同様の痛みが出る。
30年前には、交通事故も2度経験しており、鎖骨骨折と頭蓋骨にヒビが入る怪我をして、首や腕が当時は痛みが出たが、今は落ち着いている。その時に腰に痛みが出た覚えはない。
仰向けやうつ伏せで寝ると痛みが強く出るため、横向きで寝ることにしている。なお、睡眠は6時間ほど取れており、睡眠の質も申し分ないと感じている。胃腸の調子や便通にも問題は抱えていない。
腰痛時のケア方法として、整体で揉みほぐしに行くことが多い。揉みほぐしを受けるとその場では気持ちいいが、持続的にはなかなか良くならず、痛みがあまり変わらないのであれば、別のやり方に変えてみるのもよいだろうと考え、違うアプローチを探し始めた。
当院のHPで、根本原因は腰痛とは別のところにあって、筋肉は防御反応として自然のコルセットのように硬くなるといった記事を目にし、根本から改善しないといけないと思ったため、カイロプラクティックを受けたいと思い、来院された。
右腰部起立筋の筋緊張
右仙腸関節の可動制限
頚椎6番の可動制限
初回では、胸腰部の張りと痛みが強いこと、仙腸関節の可動性の左右差が強いこと、下肢長差が大きいことから、週3回からカイロプラクティック・ケアからスタートした。2回目では、背中から腰にかけて楽になったと言われ、3回目のアジャストメントでは、体の調子が良く、脚のピリピリも出なくなったとのこと。
4週目( 5回目のアジャストメント)では、経過が良好で、腰の痛みをまったく感じずに仕事をこなせたのが、本当に久しぶりで驚いていた。
28週目(23)では、車で長期旅行ができた。腰の痛みなどが起きることはなく、快適に旅ができて喜んでいた。
33週目(25回目)では、仕事が立て込むと右腰に違和感が出ることはあるが、以前に比べて明らかに少なく、休めば問題ない範囲になっているとの事。現在は、3週間ペースでカイロプラクティック・ケアを継続して受けている。
本症例は、胸部から腰部にかけての背中の張りと痛みに対して、筋骨格系の問題であると考え、自律神経系を絞らずにカイロプラクティック・ケアを行い、改善を図ったケースである。
30年前から続く腰痛は、工場勤務による重たい資材や前屈みの姿勢が常に骨盤や椎間板に負荷をかけていたことが考えられる。また、30年前に2度交通事故に遭い、鎖骨や頭蓋骨を骨折するほどの衝撃だったことから、痛みは出なかったが、骨盤部にも相当の衝撃があったことが予想される。
レントゲン評価において、負荷の度合いを表す椎間板の段階は、腰椎5番がD6レベルであった。D6レベルとは、負荷が15年以上前から続いていることを示すため、腰部への負荷は少なくとも15年はかかっていたと考えられる。腰椎5番の椎間板への負荷は、土台のバランスの崩れが原因である可能性が高い。
骨盤部において、左右の腸骨と仙骨を繋ぐ仙腸関節の可動性に左右差がみられた。左右の仙腸関節のうち、片方の仙腸関節の可動性が低下すると、もう片方の仙腸関節の可動性は過剰になることで、バランスを保とうとする。骨盤に動きに左右差があると、生活するなかで常に捻じれの動きが生じる。
椎間板は捻じれの動きに弱い構造となっているため、椎間板に負担がかかり、神経機能が低下したことが考えられる。
そこで、仙腸関節の可動性のバランスを良くするため、右仙腸関節へのアジャストメントを開始したところ、バランスが整ったことで神経の機能が回復し、腰部の痛みや脚の痺れの改善に繋がったと考える。
本症例では、土台である骨盤のバランスを整えたことで、神経機能が改善され、脳と神経がしっかり情報を正確に伝達できるようになり、自然治癒力が発揮されるようになった。その結果、体の異常を脳がしっかり把握し、症状が回復していったと考え、改めて人間の治るチカラを感じた素晴らしい症例である。
執筆者OKAカイロプラクティック髙村 悠二
東京都出身。理系大学を卒業後、ミュージシャン・音楽講師として活動を始める。活動の中で解剖学や身体の使い方という視点からの上達法をSNSで見て、「体の仕組み」に興味を深め、整体の専門学校に入学。専門学校卒業後、整体師としても働き始め、勤務先でカイロプラクティックに出会う。より本格的な技術と理論を学ぶため、シオカワスクールに入学を決意し、CSセミナーCLセミナーを修了する。勉強していく中で、自分が音楽家として活動するのではなく、カイロプラクティックでサポートしていきたい気持ちが強くなり、音楽講師をやめ、OKAカイロプラクティックに入社。カイロプラクティックの素晴らしさを普及するため日々施術に臨む。シオカワスクールで後進の育成にも携わっている。