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体がくの字に曲がった姿勢と腰痛

体がくの字に曲がった姿勢と腰痛

30代男性
主訴
体がくの字に曲がっている、腰痛
来院に至った経緯

腰痛の症状は、2年前に今の職業である車の製造業に転職し、肉体労働を始めるようになってから発症。腰が右に傾き、胴体で左に補正され、肩は左が高くなり、頭は左に倒れている状態だった。

 

現在の症状はそれでも当時よりは改善しているが、正面から見て体が完全にくの字に曲がり、さらにご高齢者のように前屈みにもなっている。そのせいか腰痛は慢性的に続いている。

 

横向きで寝ている時と仕事中の立っていることが辛く、仕事に支障が出ている。仕事では、数十キロという重たい車のパーツを持つなどの重労働があり、身体的負担が強い労働環境である。

 

自身での対策として、整体に通っているが、あまり変わっている感じがなく、別の治療法を探すことにした。カイロプラクティックは今まで受けたことはあるが、印象には残っておらず、どんな施術を受けたかは覚えていない。

 

この問題に関して、整形外科でも診てもらったが、レントゲンでは骨に異常はないと言われた。側湾症とも言われていない。

 

夜眠っているときなど安静にしていて痛みで起きるようなことはないが、睡眠の質は悪く、常に眠い。起床時に疲れが取れた感じはなく、だるさがいつまでも続いている。

 

次の日に仕事がなければ夜通し遊ぶことが多く、朝帰りすることも頻繁にある。夜早く寝るのはもったいなく感じる為、起きていたいが、現在は、痛みがあるため出かけることができなくなっている。また、遊んだ日の次の日は生活リズムを戻すのが難しく、寝たいときに眠れないこともしばしばある。

 

今回当院を選んだ理由は、仕事に支障をなくしたいことと、体をまっすぐに戻したいという希望を持ってご来院された。

初診の状態
  • 01

    左長下肢

  • 02

    左仙腸関節の可動制限

  • 03

    左仙腸関節下の窪んだ浮腫

経過と内容

初回では、体が完全にくの字に曲がっていて、疼痛も強く出ていたことと、下肢長差が顕著なことや仙腸関節の可動性の悪さから、週2回を提案し、スタートした。1回目のアジャストメントの後から少し背を伸ばしやすくなったと反応があった。

2週目(4回目のアジャストメント)では、左仙腸関節の動きも徐々についてきていた。副交感神経領域に絞ってアジャストメントをしていたが、下部胸椎のべたっとした質感と骨盤のアジャスト後の胸椎11番の可動性の変化が見られないことから、胸椎11番のアジャストメントも加えて開始した。

レストした後に下部胸椎の皮膚の質感がさらっと変化していた。腰痛、姿勢ともに回復傾向がみられ、週1回にペースを変えた。

5週目(6回目のアジャストメント)では、症状は落ち着き、正面から見て体は真っ直ぐ立てるようになった。左腰部の緊張はまだ残っているため週1のケアを継続した。

11週目(10回目のアジャストメント)では、2週間に1回のペースでも症状が戻ることはなく、ハードな業務も問題なくこなせるようになった。左の仙腸関節の可動性は上がったまま維持することができている。

25週目(16回目のアジャストメント)では、左仙腸関節の可動制限は多少あるが、左腰部の筋緊張が和らぎ、ほとんど感じない。

 

現在も仕事がハードになると体が傾くことはあるが、調子は上向きで維持できており、間隔をあけてカイロプラクティック・ケアを続けている。


考察

本症例は、構造的な身体の傾きからくる痛みに対して、筋骨格系の問題である考え、神経系を絞らずにアプローチしたケースである。非常に重たいものを持つ製造業の仕事が、身体的ストレスとなって骨盤や背骨に負担がきていたと考える。

 

カイロプラクティックにおいて、骨盤を土台とする土台理論がある。私たちの身体は、骨盤が右に傾けば、背骨のどこかで左に傾き、さらに上位部位の首を傾けたりして、頭を正中に保とうとする補正作用が働くようになっている。本症例でも、その特徴はよく現れており、身体が骨盤部で右、腰部で左、肩で右、頸部で左とお手本のように傾きと補正が認められた。

 

さらに、上部胸椎(T3)から中部胸椎(T7)にかけてのディッシングが認められた。ディッシングとは、上部胸椎から中部胸椎にかけて見られやすく、その特徴は、胸椎の後弯カーブが著しく減少し、背中の上部、およそ肩甲骨の内側がストンと真っ直ぐになっている見た目のことである。これは土台もしくはディッシングより下位のサブラクセーションによって補正で起こるものと考えられている。

 

よって、初回では骨盤の左右仙腸関節の可動性に大きな差があった左仙腸関節のみアジャストメントをすることにした。骨盤部のみで立ち姿勢に変化が見られ、くの字の姿勢や高齢者のような丸まった前傾姿勢も伸びるようになっていった。

 

しかし、下部胸椎の肌質に変化がないこと、ブレイクにも変化がないこと、可動性も乏しいことが気になった。下部胸椎も骨盤の補正が働きやすい部位であることは、シオカワスクールの講義でも学んでいたので非常に悩ましい選択であったが、アジャストメントを施したところ、明らかに皮膚の質感がガラッと変化したことがアジャストメントを継続して行おうと考えた決め手となった。

 

本症例では、骨盤を土台とする土台理論の重要さ、脳は正中を保とうとし、補正作用が働くため、補正作用であろう部位はアジャストメント対象から除外していくことの重要さ、その上で、変化が乏しい部位やサブラクセーションの特徴が消えない部位をしっかり経過観察することの重要性を再確認できた貴重な症例であるとともに、身体に備わった治るチカラの素晴らしさを感じられた症例である。

髙村 悠二

執筆者OKAカイロプラクティック髙村 悠二

東京都出身。理系大学を卒業後、ミュージシャン・音楽講師として活動を始める。活動の中で解剖学や身体の使い方という視点からの上達法をSNSで見て、「体の仕組み」に興味を深め、整体の専門学校に入学。専門学校卒業後、整体師としても働き始め、勤務先でカイロプラクティックに出会う。より本格的な技術と理論を学ぶため、シオカワスクールに入学を決意し、CSセミナーCLセミナーを修了する。勉強していく中で、自分が音楽家として活動するのではなく、カイロプラクティックでサポートしていきたい気持ちが強くなり、音楽講師をやめ、OKAカイロプラクティックに入社。カイロプラクティックの素晴らしさを普及するため日々施術に臨む。シオカワスクールで後進の育成にも携わっている。

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