交通事故後に酷くなった症状が楽になった!
社会人になってから、毎日10時間以上のデスクワークが続いていた。その影響か、ずっと腰が重たいなと感じていた。社会人3年目頃から、下半身の冷えとむくみを感じるようになった。
会社のオフィスは常に冷房が効いており、下半身の冷えに拍車を掛けて辛かった。ぎっくり腰も3回ほど経験したり、夕方になると決まって頭痛が出るようになったが、仕事の多忙から自身の体のメンテナンスを怠っていた。
仕事がパソコン作業ばかりで最初は眼精疲労がすごかったが、それが次第に頭痛へと変わっていった。いつも決まって午後以降に頭痛が出ていたため、いつの間にかお昼休憩の時間に頭痛薬を飲むということが習慣になってしまっていた。
それでも週の後半になると夕方以降に頭痛が出るということが続いたため、頭痛外来にも通ってみたが、結局薬を処方されるだけだった。それからは、薬に頼ることはやめて、お風呂で体を温めたり、近所にある頭痛に効くと評判の整体院や針鍼灸院にも通ってみたが、決まって午後になると頭痛に襲われた。
子供の頃から便秘が酷く、学校に行く日は排便があった記憶はなかった。大人になっても便秘の症状は改善せず、会社に行く平日の5日間は排便が一度もなかった。漢方の便秘薬なども試してみたが、それでも平日に出ることはなく、週末に1回出る程度だった。
45歳を迎えるころ、車の運転中に信号待ちをしていたところ、後ろからノンブレーキで激しく追突事故を起こされた。車の後部座席まで潰れるほど激しく追突されてしまい、すぐに救急車で病院に搬送された。
約1か月半、首の激しい痛みと強い吐き気が続いたが、病院のリハビリ施設で首のけん引とストレッチをしてもらい、なんとか首の痛みや吐き気は治まった。ただし、以前より明らかに首が左側へ傾きづらいなと感じるようになった。
事故から1か月半ほど経ち首の痛みが緩和されると、少し歩くだけで腰痛を感じるようになっていることに気づいた。ものの10分歩くだけでも腰全体にハッキリと痛みを感じるようになった。また、それまで一度も生理不順など感じたことがなかったが、毎月来ていたものが突然来なくなった。
次第に不正出血の回数が多くなり、怖くなって婦人科を受診すると、特に異常はないし出血も自然なものだと言われた。年齢的にそろそろ生理が終わるのかなと思ったが、その後も生理は来たり来なかったり、逆に早く来たり遅く来たり、周期がまったく安定しなくなった。
この頃から、これまであった不調がより顕著に出るようになった。便秘、眼精疲労、頭痛、下半身の冷え、むくみのどれもが酷くなった。また、事故前にはなかった症状としてめまいのようなふらつきを感じることがあった。治ったと思っていた吐き気も時折再発し、交通事故の後遺症によるものなのか、更年期による女性ホルモンの変動なのか分からずに悩んでいた。
そんなとき、たまたま以前からの友人と再会し食事をする機会があった。交通事故後に体調不良が続いていると相談してみると、「ここの先生すごいから一度行ってごらん」と紹介された。カイロプラクティックはこれまで受けたことがなかったが、わらにもすがる思いで当院に来院された。
頸部全体の過緊張
頸部左側屈の極端な可動域制限
左仙腸関節の可動域制限
頚部の椎間板はD6レベルと慢性的な段階が確認された。腰部の椎間板にもD4レベルと慢性的な段階が確認されたため、週3回のケアを提示したが、仕事の関係上週1回のケアからスタートすることにした。
4週目(4回目のアジャストメント)には、歩くと20分と経たずに出ていた腰痛が1時間歩いても、ほとんど気にならなくなった。また、平日は絶対に出なかった便秘が2日に一度は出るようになった。
8週目(7回目のアジャストメント)には、夕方以降になると毎日のように出ていた頭痛がほとんど出なくなった。眼精疲労もかなり軽減され、パソコン作業が続いた日でも一晩眠れば目の周りが軽くなっていた。この頃には便秘はほとんど解消され、毎日1回は出るようになった。この間にケアのペースを2週間に一度に広げることができた。
10週目(8回目のアジャストメント)には、カイロプラクティックケアを受け始めてから生理周期が通常に戻り、数年ぶりに2か月連続で通常周期で生理になった。下半身の冷えやむくみにも変化が見られ、本人も脚が温かいと感じるようになった。
19週目(12回目のアジャストメント)には、交通事故後続いていた身体全体の倦怠感のような重だるさはなくなり、事故前と同じように生活を送れるようになった。
現在は、ほとんどの症状が落ち着いたが、身体のメンテナンスとして定期的なカイロプラクティックケアを続けている。
今回の交通事故後の体調不良や事故前からあったさまざまな症状は、事故前から負担が掛かっていた部位に、激しい交通事故の外傷からさらに負荷が掛り、自律神経に過度な負担が掛かったことが原因だと考えられる。
事故前からあった症状をみてみると、小児からある便秘、午後(主に夕方以降)になると出る頭痛、眼精疲労、下半身の冷え、むくみ、腰痛などがあったが、初診時の検査では骨盤部と上部頸椎に反応が強くみられた。
骨盤部と上部頸椎はどちらも副交感神経の部位となる。午後になると出る頭痛は緊張性の頭痛で交感神経が過剰に働いている人の特徴となる。
小児からある便秘は骨盤部(特に仙骨部)の問題である可能性が高いが、学校や職場に行く平日には出ずに週末になると出るというような便秘は、緊張することで交感神経がさらに過剰に働き肛門括約筋が必要以上に収縮してしまい、便通を悪くしていたと考えられる。また、腸の蠕動運動は副交感神経が優位な時に活発となるが、骨盤部と上部頸椎というどちらも副交感神経支配の部位に負担が掛かっていたことからも、腸の蠕動運動の低下も考えられる。
眼精疲労もあったが、上部頸椎は目に繋がる視神経にも大きく関係している。視神経と繋がる上部頸椎に負荷が掛ることで血流異常を起こし眼精疲労になりやすい体内環境だったのだろう。下半身の冷えやむくみは骨盤部や腰部から下肢へと繋がる神経に負担が掛かることで、血管の拡張収縮が上手くいかずに血流異常を起こし、下半身の冷えやむくみとなっていたと考えられる。
更年期障害のような生理不順(不正出血)も起こしていたが、更年期障害とは脳が卵巣の状態を正しく把握できていない場合に起こりやすくなる。卵巣の機能が低下してくると、脳は女性ホルモンを出しなさいという指令を送り続けるが、その指令は交感神経を刺激し続けるため、結果として自律神経のバランスを乱しやすくなる。交通事故の後遺症なのか、更年期障害なのか患者自身は悩んでいたが、その他の症状を考えると自律神経のバランスも乱していたのだろう。
交通事故後にめまいのような症状も出ていたが、人間の平衡感覚は耳が大きく関係している。検査で強い反応があった上部頸椎は耳と密接な関係がある。また耳にある内耳にはリンパ液があり、そのリンパ液の量をコントロールしているのは自律神経の働きになる。上部頸椎のみならず骨盤部にも負荷が掛ることで副交感神経が上手く機能せずに交感神経が過剰になることで自律神経のバランスを乱した結果としてリンパ液の増減があったとも考えられる。
歩行時に10分と経たずに出てしまう腰痛は、骨盤部の問題である可能性が高い。また椎間板の段階も6段階中4段階目のD4レベルということを考えると、かなりの長期間に渡って骨盤部に負荷が掛っていたことが考えられる。
骨盤部には左右の仙腸関節という部位が存在しているが、人間には補正作用があるため、どちらかの仙腸関節に可動域制限が掛かると反対側は過剰に動いてしまう。すると歩くたびに片側だけが大きく動くため腰部に捻じれの動作が加わってしまう。
椎間板は捻じるような動作に弱くできているため、骨盤部に制限が掛かると腰部の椎間板には大きな負担となってしまう。首の椎間板は6段階中最終段階のD6レベルが確認されたが、長年大きな負担が掛かっていた首に追突事故のような強い外傷が加わることで、さらなる負担となり元々あった症状を強く引き起こしてしまったのだろう。
アジャストメントによってサブラクセーション(根本原因)が取り除かれ、体の情報が脳へ届いたことで腰痛のみならず、さまざまな自律神経症状の改善に繋がったと考えられる。交通事故のような外傷では、早期のアジャストメントが必要になるケースがほとんどであるが、あらためて神経の流れを整えて体の情報を脳へ届けてあげることの重要性が分かる症例である。
執筆者前田カイロプラクティック藤沢院前田 一真
1982年、神奈川県生まれ。シオカワスクール在学中から塩川カイロプラクティック治療室にて内弟子として学ぶ。塩川満章D.C.と塩川雅士D.C.に師事し、副院長まで務める。2023年に前田カイロプラクティック藤沢院を開院。一人でも多くの人にカイロプラクティックの持つ無限の価値を知っていただくため、カイロプラクターとして尽力している。またシオカワスクールでは現役講師を務めており、後任の育成にも力を入れている。