シオカワグループ シオカワグループ

両方の臀部から腿裏にかけての痛みと左手小指側の痺れ

両方の臀部から腿裏にかけての痛みと左手小指側の痺れ

60代男性
主訴
両方の臀部から腿裏にかけての痛み、左手小指側の痺れ
来院に至った経緯

2024年2月に前立腺がんの手術を受けたことがきっかけで、術後の入院期間中に腰痛を発症した。術後1ヶ月間は寝たきりの状態で過ごし、4月にはさらに悪化。長時間座ることが困難になり、仕事終わりには腿裏に強い痛みが出るようになった。

 

痛みの部位は、左臀部から腿裏、右臀部から腿裏にかけて両側に分布。午前中の腰の調子は良く、夕方には腰痛が出やすい。自己ケアとして、しゃがんで立ち上がると痛みが大きく緩和された。

 

日常生活ではスマホゲームを頻繁にプレイしており、特に時間制限のあるイベント時には長時間画面に張り付くことが多い。 そのため、スマホを長時間使用することが習慣化している。

 

職業はソフトウェアエンジニアで、デスクワークが中心。 画面を長時間注視するため、眼精疲労も感じている。 また、左手の痺れは歩行時に出現し、小指側に強く現れた。 歩行中は常に症状が続くが、首を回したり、首を動かして音が鳴ると軽減した。

 

運動習慣はなく、外出の機会も少ない。 自宅ではPCやスマホを長時間使用しており、就寝時もスマホで動画を視聴。 就寝時間は深夜1~2時頃で、睡眠の質は悪い可能性があるが、特に困っている自覚はない。

 

整形外科を受診するも改善がみられず、過去にカイロプラクティックを受けた際に体調が良くなったことを思い出す。 そこでカイロプラクティックについて調べたところ塩川グループを知り、施術を受けてみたいと思い当院を訪れた。 整形外科では、腰椎4番にすべり症があると診断された。

初診の状態
  • 01

    右上後腸骨棘上部の窪んだ浮腫

  • 02

    腰椎5番のスポンジ状の浮腫

  • 03

    頚椎7番のスポンジ状の浮腫

経過と内容

1週目(1回目のアジャストメント)では、初診時は浮腫が強く、右の仙腸関節の可動性も全く感じられなかった。 また、腰部の椎間板スペースの段階がD4からD5に移行している程度であることから、腰部には約10年負担がかかっていたと考えられるため、週2~3回のケア計画を提案した。仕事終わりと土曜日の来院が可能であることから、週2回のペースでカイロプラクティック・ケアを開始した。

 

2週目(3・4回目のアジャストメント)では、階段の昇降時に臀部から腿裏にかけて強い痛みが出現し、最近では歩行困難なほど痛みが増している。 また、手の痺れに関しても依然として変化がみられなかった。 浮腫や腰部の筋緊張に大きな変化はなかったものの、右仙腸関節の可動性は改善がみられたため、神経の回復が進んでいることを伝え、安心を促した。

 

5週目(8回目のアジャストメント)では、右の腿裏の痛みと左手の痺れは軽減し、右仙腸関節の可動性も大幅に向上した。一方で、L4・L5の肌質はカサカサしており、触診時の違和感が強かったため、リスティングをL5とC7に変更。

 

9週目(11回目のアジャストメント)では、長時間の座位後に症状が出ることはあるものの、それ以外の場面ではほとんど気にならなくなった。左手の痺れも消失した。

 

24週目(12回目のアジャストメント)

ぎっくり腰を発症し、再来院。 痛みは右臀部から腿裏にかけて出現し、左側の痛みは消失していた。 腰椎の椎間板スペースがD4であることや、長年の負担が影響していることを説明し、メンテナンスの重要性を理解していただいた。 久々のアジャストメントであったため、12・13回目は右腸骨のアジャストメントに戻して対応した。

 

26週目(14回目のアジャストメント)

腰椎5番と頚椎7番をアジャストメント後、レスト後の肌質が大きく変化し、皮膚の質感がサラサラと滑らかになった。

 

29週目(16回目のアジャストメント)

右臀部の痛みはわずかに残るが、首から腕にかけてや左臀部から腿裏にかけての状態は非常に良好。 今後も定期的なアジャストメントを継続する予定である。


考察

今回のケースでは、手術をきっかけに腰痛を発症したが、腰椎の椎間板レベルがD5に近いD4であることから、約10年前から腰部に負担がかかっていたと考えられる。 さらに、40代でぎっくり腰を2回経験していること、腰椎4番にすべり症があること、長時間のゲームやデスクワークによる同じ姿勢の継続などが、腰部への負担を増加させる要因となっていたと推測される。

 

すべり症では、腰椎がずれることで後方の脊柱管が狭くなり、馬尾神経や神経根が圧迫されやすくなる。 また、腰部の椎間板に負担がかかる大きな要因の一つは、背骨に捻りの動作が加わることであるが、その背景には骨盤のバランスの崩れが関与している。 骨盤の仙腸関節は左右に一つずつあり、片側の可動性が低下すると、もう一方の可動性が亢進しやすい。 この左右差が骨盤の動きを悪化させ、捻りの動作を引き起こし、背骨へと負担が伝わる。

 

そこで、まず骨盤部のアジャストメントを行い、仙腸関節の可動性の左右差を解消した。 その結果、腰部への余計な負荷が軽減され、腰部から足にかけての神経伝達がスムーズになったと考えられる。続いて腰椎5番のアジャストメントを行い、腰仙部のサブラクセーションを取り除いたことで、臀部から腿裏にかけての神経回復が促進され、脳と体のコミュニケーションが円滑になり、さらなる症状の軽減につながったと考える。

 

手の痺れは首から小指側にかけて現れており、小指側の痺れは下部頚椎のサブラクセーションによる可能性が高い。 7回目までは骨盤と上部頚椎のアジャストメントを行い、ある程度の症状軽減がみられた。これは、骨盤部の安定化により背骨全体のバランスが改善され、頚部の安定性が向上したことによるものと考えられる。

 

ただし、腰部と下部頚椎へのアジャストメントを行った後のほうが、症状の変化が顕著であった。 本ケースでは、20歳の頃に交通事故を経験した後、左腕に痺れが出始めていることから、むち打ち(頚椎捻挫症)の影響があるのだろうと考える。 頚椎は7つの椎骨から構成され、頭部(体重の約10分の1)を支えている。屈曲・伸展の可動域が最も大きいのは 頚椎5/6番であり、次に頚椎6/7番である。

 

むち打ちは、首が急激に前後へ動くことで、鞭のようにしなり、過剰な伸展によって前方部に損傷を引き起こす。 そのため、通常は下部頚椎にサブラクセーションが生じやすい。今回、頚椎7番にはカサついた質感や、棘突起下端の浮腫が認められ、サブラクセーション(根本原因)の兆候がみられた。 そこで的確にアジャストメントを行った結果、サブラクセーション(根本原因)が解消され、自然治癒力の向上に大きく貢献できたと考えられる。

 

本症例は、患者の既往歴や過去の経験をしっかり聞くことで、アジャストメントすべき箇所を絞っていけた事例であり、改めてヒアリングの重要さ、検査の正確さ、そして人間の治るチカラの偉大さを感じられた素晴らしい症例であった。

髙村 悠二

執筆者OKAカイロプラクティック髙村 悠二

東京都出身。理系大学を卒業後、ミュージシャン・音楽講師として活動を始める。活動の中で解剖学や身体の使い方という視点からの上達法をSNSで見て、「体の仕組み」に興味を深め、整体の専門学校に入学。専門学校卒業後、整体師としても働き始め、勤務先でカイロプラクティックに出会う。より本格的な技術と理論を学ぶため、シオカワスクールに入学を決意し、CSセミナーCLセミナーを修了する。勉強していく中で、自分が音楽家として活動するのではなく、カイロプラクティックでサポートしていきたい気持ちが強くなり、音楽講師をやめ、OKAカイロプラクティックに入社。カイロプラクティックの素晴らしさを普及するため日々施術に臨む。シオカワスクールで後進の育成にも携わっている。

pagetop