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両手の痺れ(寝起きだけ)

両手の痺れ(寝起きだけ)

20代女性
主訴
両手の痺れ(寝起きだけ)、末端冷え性、生理痛、生理不順、頭痛、便秘、股関節の痛み、背中の張り
来院に至った経緯

子供の頃から体は強い方ではなかったが、大学生になって一人暮らしをしてから体調が急激に悪くなった。子供の頃から末端冷え性や便秘があり、中学生では生理痛、高校生になるころには生理不順が酷くなった。

社会人になってデスクワークになると、左股関節の痛みや背中の張りを顕著に感じるようになった。また、これまでどれほど体調が悪くても頭痛を感じることはそれほどなかったが、社会人になって半年も経つころには夕方になると毎日のように頭痛を感じるようになり、頭痛薬が手放せなくなった。

末端冷え性は自分で分かるほど手足だけが冷たく、運動をしてもサウナに入っても手足だけが冷たく感じていた。便秘は、現在は便秘薬を飲んで出しているため毎日出るが、薬を飲まないと1週間出ないことも頻繁にあった。

生理痛は年々酷くなっているように感じており、社会人になってからは初日と2日目は薬を飲んでも動けないほどの腹痛と吐き気があった。また、高校生の頃から生理不順があり2週間で生理が来ることもあれば、3か月生理が来ないこともあり、来ても1日で終わることもあれば10日以上出血が続くこともあった。

職場の同僚に針治療がいいよと勧められ、針鍼灸院に通うようになった。この針治療が体に合わなかったのか、翌日になるとベッドから起き上がれないほどのダルさが出てしまった。一日、仕事を休んで翌朝起きると両手に痺れを感じるようになった。

それから毎朝のように起きると両手に痺れを感じる日が続くようになった。痺れは手首から先だけで、寝起きの10~20分くらいのみ。朝の支度が終わるころには痺れは消えているが、その状態が1か月以上も続いたため、怖くなり脳神経外科で検査をした。

検査ではMRIやCTも撮影したが異常なしと診断された。寝起きの痺れは何か月も続き、どうしたらいいのか不安に感じていたところ、親戚の紹介で当院に来院された。

初診の状態
  • 01

    頸部胸鎖乳突筋の過緊張

  • 02

    左仙腸関節の可動域制限

  • 03

    手首から先と足首から先の異常な冷え感

経過と内容

椎間板の段階はそれほど慢性的なところは確認されなかったが、自律神経症状が強く出ていたため、初期集中期の段階では週1回のペースからケアをスタートした。

2週目(2回目のアジャストメント)には、寝起きの10~20分間だけ感じていた両手の痺れはほとんど感じなくなった。

4週目(4回目のアジャストメント)には、椅子から立ち上がるだけで感じていた左股関節の痛みも感じなくなり、背中の張り感もほとんど感じなくなった。また、寝起きの10~20分間だけ感じていた両手の痺れはまったく感じなくなった。この頃には週1回だったケアのペースを2週間に広げることができた。

8週目(6回目のアジャストメント)には、夕方になると毎日のように感じていた頭痛がほとんど気にならなくなり、毎日のように頼っていた頭痛薬を手放すことができた。また便通も良くなっているように感じ、便秘薬を飲まなくても1~2日に1回は出るようになった。

12週目(8回目のアジャストメント)には、酷かった生理痛も徐々に緩和し、薬を飲めば生理初日でも仕事に行けるようになった。

18週目(11回目のアジャストメント)には、あれほど冷え切っていた手足にも血流が戻り、本人も手が温かいと感じるようになった。この頃には2週に1度のケアのペースを3週間に広げることができた。

24週目(13回目のアジャストメント)には、生理周期も落ち着き28日に1度のペースで生理が来るようになった。また、生理初日や2日目には動けないほどの生理痛はほとんど感じなくなり、薬を飲まなくても仕事に行けるようになった。

現在は、ほとんどの症状は落ち着いたが、体のメンテナンスとして定期的なカイロプラクティックケアを続けている。


考察

今回の寝起きの10~20分間だけ感じていた両手の痺れの原因は、交感神経が過剰に働くことで起こる血流異常からだと考えられる。人間の血流は、血管の拡張/収縮によって行われているが、血管の拡張/収縮は自律神経によってコントロールされている。

人間は交感神経が優位になると体の中心に血液が集まってくる。交感神経の作用として、手足など末端の血管が収縮するために起こる現象だが、交感神経が優位な状態が長期間続くことで、交感神経が過剰に働き、手足などの末端まで血流が巡らなくなっていた。活動して手を動かして多少は血流が再開することで、痺れは寝起きの10~20分間だけ感じていたと考えられる。

社会人になって長時間のデスクワークで骨盤にも負荷がかかり、そのことから股関節の痛みに繋がっていたと考えられる。また、人間の土台である骨盤部の乱れは、上に乗っている背骨にも直接的に影響し、強い背中の張り感なども感じていたのだろう。通常、背中は後ろカーブがついているものだが、肩甲骨の間は背中がピシっと真っすぐな形状をしていた。このケースでは背中よりも下の部位にサブラクセーション(根本原因)があることを示している。

生理痛や生理不順などの婦人科系の症状は、女性ホルモンの分泌異常が考えられる。エストロゲンやプロゲステロンといった女性ホルモンの分泌が低下すると、プロスタグランジンというホルモンの分泌が活発になる。このプロゲステロンが分泌されると激しい生理痛などを引き起こしてしまう。また女性ホルモンの分泌低下は生理周期も乱してしまい、生理不順に繋がっていたと考えられる。

夕方以降に出る頭痛も交感神経が優位になっているときに起こる緊張性の頭痛である。また子供の頃から続いていた便秘も自律神経の問題だったのだろう。骨盤部と上部頸椎は副交感神経支配の部位であるが、副交感神経にサブラクセーション(根本原因)があることで、交感神経は過剰に働くようになり、自律神経のバランスが乱れ、さまざまな症状に繋がっていたのだろう。

両手の痺れや背中の張り感など、首や背中の問題と考えられる症状が出ていたとしても、問題の根本原因を特定して神経系を絞ってアプローチすることが大切である。今回の症例では自律神経のバランスの乱れがさまざまな問題に繋がっているということを検査によって突き止めたことで、結果に繋がったと考えられる。たとえどんな症状が出ていたとしても、神経の流れを整えて体の情報を脳へ届けることの重要性が分かる症例である。

前田 一真

執筆者前田カイロプラクティック藤沢院前田 一真

1982年、神奈川県生まれ。シオカワスクール在学中から塩川カイロプラクティック治療室にて内弟子として学ぶ。塩川満章D.C.と塩川雅士D.C.に師事し、副院長まで務める。2023年に前田カイロプラクティック藤沢院を開院。一人でも多くの人にカイロプラクティックの持つ無限の価値を知っていただくため、カイロプラクターとして尽力している。またシオカワスクールでは現役講師を務めており、後任の育成にも力を入れている。

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