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不眠症

不眠症

30代男性
主訴
不眠症、下痢、腰痛、下肢の痺れ
来院に至った経緯

趣味は登山と山登りで週末になると必ず山に行っていた。ある日、登山で入山して1時間ほど山の中を歩いているときにほんの小さな段差を踏み外した瞬間に腰に激痛が走り、次の瞬間には左脚全体に痺れが出た。

仕事は社会人になってから15年以上デスクワークをしていたため、元々慢性的な腰痛があったものの脚に痺れが出たことはなかった。山の中で独り動けずにうずくまっていると、たまたま通りかかった別の登山者に見つけてもらい、なんとか下山することができた。

この登山の2週間前から睡眠の質が悪くなっており、当日もあまり寝ずに登山に行った。睡眠は寝入りが悪くなり布団に入っても3~4時間ゴロゴロしていることが多かった。仕事も忙しかった時期で体は疲れているはずなのに、スポーツ直後のように目が冴えてしまい眠ることができなかった。

幼少期の頃からよく眠る子で手が掛からなかったと親から言われていたくらい、これまで睡眠で困ったことは一度もなかった。調子が良いと2時間くらいで眠れることもあったが、そのときは1~2時間もすると中途覚醒してしまった。

小学校低学年の頃からお腹を下しやすく、大人になってそれは変わらなかった。いつも急に催してきて水のような下痢になることが多かった。お腹に痛みがあるような下痢ではなく、普通にトイレに行くと水が流れるような下痢が出てしまうということが当たり前になっていた。

会社の先輩から30代後半になってきたら無理が効かなくなるから、体のメンテナンスをしないと一気にガタが来るぞと忠告を受けていた直後に、不眠症や脚の痺れなど、これまでなかった体の不調が出てきたことで、何かないかなと探していたところ当院の㏋にたどり着き来院された。

初診の状態
  • 01

    頸部胸鎖乳突筋の過緊張

  • 02

    左第一頸椎横突起にスポンジ状の浮腫

  • 03

    左仙腸関節の可動域制限

経過と内容

腰部の椎間板にD4レベルと慢性的な段階が確認されたため、週2回のケアを提示したが、仕事の関係上週1回のケアからスタートすることにしたが多忙のためケア計画よりも間隔が開いてしまうこともあった。また、ケアの途中で長期間(3か月間)の海外出張が入ったため、ケアの間隔がかなり開いてしまった。

5週目(5回目のアジャストメント)には、少し歩くだけで感じていた腰痛が、歩いていても楽に感じるようになってきた。また脚の痺れもつま先にはほとんど感じなくなり、ふくらはぎの外側に突っ張るような痺れを感じるようになった。

10週目(7回目のアジャストメント)には、歩いているときの腰痛はまったく感じなくなった。また脚の痺れよりも太もも裏のツッパリ感の方が強く感じるようになった。睡眠の質にも変化が見られ、布団に入って1時間以内には眠れるようになった。下痢に関しては、この段階で本人も忘れているほど落ち着いていた。

17週目(10回目のアジャストメント)には、睡眠の質がかなり良くなり30分もせずに眠れるようになった。また一度眠れば朝まで起きることはなくなった。ただし、この段階で長期間(3か月間)の海外出張となってしまい、ケアの間隔が大幅に開いてしまった。

59週目(22回目のアジャストメント)には、不眠症、下痢、腰痛、脚の痺れなどはすべて解消され、趣味の山登りに出かけてもまったく問題なくなった。

現在は、ほとんどの症状が落ち着いているが、身体のメンテナンスとして定期的なカイロプラクティックケアを続けている。


考察

今回の不眠症の原因は、自律神経のバランスが乱れていたことが最大の原因だと考えられる。ケアの途中で長期間(3か月間)の海外出張が入ってしまったが、それでも完全に元に戻ってしまうわけではなく、初診時の段階ではそれだけ長期間に渡って自律神経に負担が掛かっていたのだろう。

自律神経には日中活動するときに働く交感神経と、夜休まるときに働く副交感神経がある。検査では骨盤部と上部頸椎に反応が強く出ていたが、骨盤部と上部頸椎はどちらも副交感神経支配の領域となる。

副交感神経にサブラクセーション(根本原因)があることで、交感神経が過剰に働いた結果、休まる神経が働かずに不眠症になっていたと考えられる。また無痛での下痢も交感神経が過剰になっていたことが原因だろう。交感神経が過剰に働くことで、人間の排泄機能が亢進してしまい、水のような下痢となっていたのだろう。

長年あった慢性的な腰痛は、骨盤部の乱れが腰部の配列の乱れに繋がり、腰・骨盤の神経に多大な負荷が掛かっていたものと考えられる。少し歩くだけで出てしまう腰痛は骨盤部の問題である可能性が極めて高い。

脚の痺れも出ていたが、脚の神経は腰・骨盤から下肢に向かって神経が伸びている。人間の痛みの感覚は「正常→痛み→痺れ→麻痺」の順番で進行していく。患部が腰・骨盤にもかかわらず、つま先の方まで症状が出ており、それが痛みではなく痺れということはそれだけ長い期間を掛けて神経が損傷していたのだろう。

痛みや痺れなど筋骨格系の問題と思われる症状が出ていたとしても、不眠症や下痢など自律神経の問題と思われる症状が重なっているときは、必ずアプローチする神経系を絞る必要がある。

検査によって問題となっている神経系を特定し、サブラクセーション(根本原因)が取り除かれ体の情報が脳へ正しく届いた結果、症状の改善に繋がったと考えられる。改めて問題と鳴っている神経系を絞ってアプローチすることの重要性が分かった症例である。

前田 一真

執筆者前田カイロプラクティック藤沢院前田 一真

1982年、神奈川県生まれ。シオカワスクール在学中から塩川カイロプラクティック治療室にて内弟子として学ぶ。塩川満章D.C.と塩川雅士D.C.に師事し、副院長まで務める。2023年に前田カイロプラクティック藤沢院を開院。一人でも多くの人にカイロプラクティックの持つ無限の価値を知っていただくため、カイロプラクターとして尽力している。またシオカワスクールでは現役講師を務めており、後任の育成にも力を入れている。

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