薬に頼らず不眠症と高血圧が改善された!
5年前、40歳のときに転職をし、医療事務の事務長として勤務していた。事務長としての仕事はとても多忙で、毎日のように終電近くまで勤務が続いた。休日出勤もどんどん増え、気づけば休みという休みが無くなっていた。
そんな状況が1年ほど続き、気づけば不眠症になっていた。布団に入っても3~4時間ゴロゴロしているのが当たり前になり、酷いときは朝まで眠れなくなってしまった。日中は常に眠気と気だるさが付きまとい、連日の勤務で疲れているはずなのに、夜になると眠れない日々が続いた。
職場の健康診断では血圧値が引っかかるようになった。上が140と少しだけ高かったが、下が110とかなり高い数値で降圧剤を飲むようになった。睡眠薬も飲んでみたが、夜になると相変わらず不眠症に悩まされたため、不要な薬は飲まない方が良いと判断して睡眠薬の服用はやめることにした。
社会人になってからずっとデスクワークだったため、20年以上も慢性的に腰痛に悩まされていた。また子供の頃から手足など末端が冷え切っていていたが、眠れないことでメンタル面も不安定になりそれどころではなかった。
睡眠薬も効かないなら自律神経の問題かと思い、自律神経に効くと評判の鍼灸院で針治療を受けることにしたが、半年間通ったがまったく改善されなかった。そんなとき、自身が勤務する病院の看護師長から「ここの先生に施術してもらって高血圧が良くなったよ」とカイロプラクティック院を紹介された。
高血圧が良くなれば、不眠症にも多少なりとも効果があるかもと期待して、当院に来院された。
正中仙骨稜の強い浮腫感
腰部起立筋の過緊張
頚部胸鎖乳突筋の過緊張
初診時の状態では、上部頸椎には明らかな可動域制限があった。体表温度検査では、骨盤部と上部頸椎に明らかに左右の温度の誤差が確認された。また正中仙骨稜と第一頸椎右横突起に強い浮腫が確認され、腰部起立筋と頚部胸鎖乳突筋は過緊張の状態であった。
レントゲン評価では、腰の椎間板の段階は慢性的なD3レベルが確認された。首の椎間板の段階は慢性的なD4レベルが確認され、首の前弯カーブ(前カーブ)は消失してストレートネックとなっていた。
初期集中期の段階では週2回のケアを提示したが、仕事の関係で週1回のケアから開始した。ただ、多忙のため週1回以上の間隔が開いてしまうことが多かった。
8週目(6回目のアジャストメント)には、仕事中の腰痛が軽くなってきた。この頃には降圧剤を飲んでいると血圧が下がりすぎてしまうため、降圧剤の服用をやめることができた。
16週目(9回目のアジャストメント)には、血圧値は薬に一切頼ることなく正常値まで戻った。また手足に少しずつ血流が戻ってきたのか、それほど冷たさを感じなくなった。
43週目(16回目のアジャストメント)には、睡眠の質も変わってきて朝まで眠れないということは一切なくなり、夜中に起きる回数も明らかに減った。また、腰痛はすっかり感じなくなった。
64週目(22回目のアジャストメント)には、寝入りも良くなり、夜中に起きてしまうこともなくなり、朝まで眠れるようになった。
現在は、ほとんどの症状が落ち着いたが、身体のメンテナンスとして定期的なカイロプラクティックケアを続けている。
今回の不眠症は、自律神経の乱れが原因であったと考えられる。
検査では骨盤部と上部頸椎に強い反応があった。骨盤部と上部頸椎はどちらも副交感神経支配の部位となる。副交感神経にサブラクセーション(根本原因)があったことで、交感神経が過剰に働き、その結果休まる神経が働かずに不眠症を発症していたと考えられる。
高血圧も発症していたが、上140下110と極端に下だけが高い場合は副交感神経の問題が考えられる。血圧には収縮期血圧(上)と拡張期血圧(下)がある。交感神経が過剰に働くことで、末梢の血管が収縮して心拍数が増加して心臓から送り出される血液量が増えて、血圧が血管を押し広げる力が高まる。
その結果、上の血圧値が正常域なのに下の血圧だけが高くなる。またこのときに手足の先などにある末梢血管が閉じることで、末端冷え性も誘発させてしまうケースが多くみられる。拡張期血圧(下)だけが高い場合や末端冷え性を発症している場合は交感神経が過剰に働いている人の特徴となる。
長年の腰痛もあったが、腰痛の場合は仙腸関節の問題なのか、腰仙関節の問題なのか、あるいは仙骨の分節の問題なのかを詳しく分析できる検査力が何よりも重要となる。今回の腰痛では、第3仙結節を中心に正中仙骨稜全体に強い浮腫感があったことから、仙骨部の神経に強い負荷が掛っていたものと考えられる。
アジャストメントによりサブラクセーション(根本原因)が取り除かれ、自律神経のバランスが整った結果、不眠症、高血圧、末端冷え性などの改善に繋がったと考えられる。
今回のケースでは、20年以上続いた腰痛以外にも、さまざまな自律神経症状が出てしまっていた。多忙のため、ケア計画も予定より間隔が広がってしまったが、あらためて神経の流れを整えて体の情報を脳へ届けることの重要性が確認できる症例である。
執筆者前田カイロプラクティック藤沢院前田 一真
1982年、神奈川県生まれ。シオカワスクール在学中から塩川カイロプラクティック治療室にて内弟子として学ぶ。塩川満章D.C.と塩川雅士D.C.に師事し、副院長まで務める。2023年に前田カイロプラクティック藤沢院を開院。一人でも多くの人にカイロプラクティックの持つ無限の価値を知っていただくため、カイロプラクターとして尽力している。またシオカワスクールでは現役講師を務めており、後任の育成にも力を入れている。