
10年間の不眠症と睡眠薬依存からの脱却
病院の事務職として日々忙しく働き、デスクワーク中心の生活は長時間の同じ姿勢を強いられ、さらに業務のプレッシャーや人間関係のストレスも重なり、いつしか慢性的な不眠症になってしまっていた。
最初は「一時的なものだろう」と思い、病院で処方された睡眠薬を服用し始めたが、しばらくすると薬の効果が薄れ、1錠では眠れなくなり、2錠、3錠と増やしていく日々が続いた。結局それでも効かなくなってしまい、結果的に一番強い薬を3錠飲まないと眠れない状態になってしまった。
それ以上の薬の増量も考えたが、医師から「これ以上は出せない」と制限がかかるほど薬に依存してしまっている状態だった。
「これからまた薬が効かなくなったらどうしよう」
という不安と恐怖を抱えながら、睡眠薬に頼らざるを得ない生活が続いていたころ、YouTubeの動画が目に止まった。動画の中で語られていたのは、神経の働きと睡眠の関係で、「もしかしたら、これなら私も治るかもしれない」と思い、初めて病院以外の治療を受けてみようと決意を決め、当院へ来院された。
左仙腸関節の明らかな可動制限
上部頸椎の不安定感
下部頸椎に大きいスポンジ状の浮腫
腰部の椎間板にD4-5レベルと慢性的な段階が確認されたため、週2回のケアを提示したが、仕事の関係上週1回のケアからスタートすることにした。
3週目のアジャストメント(3回目のアジャストメント)時には今まで3錠は絶対に飲まないと眠れないほどだった不眠が半錠にまで減った。また、寝起きも良くすっきりと起きれるようになった。
それと同時にこのタイミングあたりから、左股関節と右膝・右胸鎖乳突筋に強い痛みが出るようになってきた。
特に右膝の痛みは強く屈伸ができなかったり、階段の上り下りができなかったり、仰向けで足を伸ばして寝れないこともあった。首は普段は気にならないが、触ると鞭打ちのような鋭い痛みが出るようになった。
この段階から、膝のIN変位と頸骨前方変位も確認できたため、膝関節の調整も並行して行った。
5週目のアジャストメント(5回目のアジャストメント)時には正座はできないものの睡眠時・歩行時の膝の痛みは無くなった。また、階段の上り下りなどもスムーズに行えるようになり、スムーズな歩行が確認できた。また、この頃から今まで右靴下がクルクル回りかかと部分が足の甲側に来ていたのが無くなったと話していた。
8週目のアジャストメント(8回目のアジャストメント)時には正座にはまだ若干制限が残るものの基本的な動作はほとんどスムーズに行えるようになっていた。
現在は安定してきているため10日~14日間隔でのケアを提案したが、本人の意思もあり引き続き週1回のケアを続けている。
今回の患者は仕事が激務で常にストレスを抱えており、不眠が続いてしまい睡眠薬が手放せないという状態だった。
体表温度検査では上部頸椎とS3にはっきりとしたブレイクが見られ、レントゲン評価では腰椎がD4-5とかなり慢性的だった。
それに加え、仙骨に大きい浮腫と鋭い圧痛が見られ、上部頸椎にも大きい浮腫と可動制限が見られたことから副交感神経にサブラクセーションが起こり交感神経が過剰になってしまっていたのだと考えられられた。
また、この患者はてんかんも患っていた。てんかんの場合は上部頸椎のリスティングと逆から打ってしまうと悪化してしまう危険性がある。
そのため、検査を集中して行い総合的に分析したことでリスティングに確信を持ってからアジャストメントを行なった。
今回のケースでは経過として膝や股関節、首に強い痛みが出ていた。しかし、検査では炎症所見は見当たらず外傷もないことから骨盤が安定していない状態から安定しようと変わっていく中で起こった一時的な反応だったと考えられる。
このように治療の経過で今までに感じたことのなかったような場所に症状が出たり、一時的に患部の痛みや痺れが強くなることもあるが、基本的に神経は「麻痺→しびれ→痛み」の順に回復の経過を辿っていくことが多い。
アジャストメントを続ける中で身体に変化が起こっていくことは正常な反応で、経過は良いとしっかりと検査した上で自信を持って伝えられたことで患者も不安にならずに治療を続けられた。
検査をしっかり行なった上でリスティングに確信を持ち、患者とコミュニケーションをしっかりとって信頼関係の構築していくことの重要性を改めて認識できた。
また今回はC1と骨盤に問題が見られたが、これらは副交感神経によって支配されている。副交感神経領域にサブラクセーションが起こったことで神経伝達が正常でなくなり、交感神経が過剰になっていたと考えられる。
自律神経には交感神経と副交感神経があるが、交感神経は車に例えるとアクセルの部分であり、副交感神経はブレーキの部分にあたる。副交感神経のサブラクセーションにより自律神経のバランスが乱れ、交感神経が過剰になることで睡眠中も身体が活発で休まらないため、不眠を起こしていたと考えられる。
今回は集中的に副交感神経支配領域へのアジャストメントを行ったことにより、自律神経の切り替えがうまくいくようになったことで不眠の解消につながったと考えられる。
執筆者塩川カイロプラクティック治療室高島 克哉
神奈川県川崎市出身。横浜市の整体院に勤務後、世田谷区で開業。自分の治療法に確信が持てず、様々な治療法を模索し多くの講習会に参加。そんな中、偶然塩川雅士D.Cの記事を読んだことをきっかけにカイロプラクティックの持つ無限の可能性に衝撃と感動を覚える。その後塩川カイロプラクティックスクールに参加し、研修を経て正式に入社。現在は治療にあたりながら塩川スクールのインストラクターを担当する。