電車移動中もトイレの事は気にならずに生活できるようになった!
幼少期から胃腸が弱く、急に下痢が出ることが頻繁にあった。特にお腹が痛くなるわけではなく、急に催してトイレに駆け込むということは小学校低学年のときからあった。小学校・中学校とサッカーをやっていたが、試合中に急に催してトイレに行きたくなって交代することが多かった。
サッカーの場合、一度交代すると試合に戻れなくなるので、特に怪我をしたわけでもないのに試合を途中で辞退することに周囲の人の理解が得られず、結局サッカーは中学までで辞めてしまった。
高校生になり電車通学をするようになってからは毎朝のように下痢になり、痛みもなく急に催してくるため各駅のトイレの場所を把握しておかないと通学も満足にできなくなってしまった。
大学生になっても下痢が治ることはなく、通学時に下痢になり途中下車してはトイレに駆け込むということを毎朝のように繰り返して、朝一の大学講義に間に合わないことも頻繁にあった。この頃から睡眠の質が急激に悪くなり、寝ても2時間くらいで目が覚めてしまうようになった。また夕方になると頭痛がしてくることが頻繁に続くようになり、頭痛薬を持ち歩くようになってしまった。
下痢の頻度はどんどん多くなり、毎回のように水のような下痢が続いていた。通学時のみならず大学の講義中にも下痢になり、授業を途中でぬけることも増えてしまった。病院では下痢止めの薬を処方されたがまったく効かず、社会人になってもこのままだったらどうしようと悩んでいたところ親戚の方からのご紹介で来院された。
頸部全体の過緊張
S2を中心に正中仙骨稜にスポンジ状の浮腫
右後頭部と右第一頸椎横突起にスポンジ状の浮腫
腰部の椎間板にD3レベルと慢性的な段階が確認されたため、週2回のケアを提示したが、学業の関係上週1回のケアからスタートすることにした。
6週目(6回目のアジャストメント)には、睡眠の質が少し改善した。2時間に一度は起きてしまっていたものが、4時間くらいは連続で眠れるようになり、通学時の下痢の回数が減ったように感じた。また、この段階でケアのペースを2週間に一度のペースに広げることができた。
12週目(9回目のアジャストメント)には、睡眠の質はかなり安定して、6~7時間連続で眠れるようになった。また通学時の下痢はほとんどなくなったが、試験の当日など緊張するような日は下痢になることもあった。また、本人も忘れていたほど頭痛はまったく出なくなり、気づけば頭痛薬はまったく飲まなくなった。
16週目(11回目のアジャストメント)には、睡眠の質や下痢になってしまう症状はすっかり落ち着き、通学時にトイレを気にするようなことはまったくなくなった。また、この段階でケアのペースを3週間に一度のペースに広げることができた。
現在は二度と同じような症状に苦しみたくないという思いから、1か月に一度のカイロプラクティックケアを続けている。
今回の下痢の問題は、上部頸椎と骨盤部という副交感神経部位のサブラクセーション(根本原因)によって、交感神経と副交感神経のバランスが乱れた自律神経の問題だと考えられる。今回の下痢のように痛みもなく水が流れるような下痢の場合は副交感神経の問題である場合が多くみられる。
自律神経は交感神経と副交感神経があるが、交感神経は車に例えるとアクセルの部分であり、副交感神経はブレーキの部分にあたる。副交感神経のサブラクセーション(根本原因)により自律神経のバランスが乱れ、交感神経が過剰に働くことで機能が亢進し過ぎた結果、排出機能が過剰に働いて下痢になったり、休息のスイッチが入れられず不眠症になってしまっていたと考えられる。
また夕方以降に出る頭痛は緊張性の頭痛であり、これも交感神経が過剰に働いているときの特徴でもある。交感神経は緊張したりストレスが掛かったときに働く神経であるため、自律神経のバランスが乱れると、このような頭痛が出ることが多くある。頭痛は出る場所や質、時間帯や環境の変化などで負担がかかっている神経系が変わってくる。
今回の症例のように、自律神経の問題があるケースでは必ず問題の神経系を絞ってアプローチすることが重要である。過剰に働いている神経を抑えるために副交感神経のみにアプローチしたことが結果に繋がったと考えられる。一度にあちこちアジャストメントするのではなく、神経系を絞ってアプローチすることの重要性が分かる症例である。
執筆者塩川カイロプラクティック治療室塩川 雅士D.C.
1980年、東京都生まれ。17才で渡米後、2004年パーマーカイロプラクティック大学を優等で卒業。D.C.の称号取得。米国ナショナルボード合格。日本カイロプラクティックリサーチ協会(JCRA)役員。2005年からカイロプラクターを育成する学校の運営と講師に携わり、現在、年間約300時間の講義やセミナーなどの活動を全国で精力的に行っている。