

学生時代はとても健康で、怪我や事故の経験もなく、頭痛や体調不良とは無縁の生活を送っていた。しかし、社会人になってから集中して目を酷使することが多くなり、その影響か徐々に体調の不調、特に頭痛が強く出るようになった。
約5年前に転職してからも頭痛の悩みは続いている。仕事内容は、前かがみの姿勢で背中を反らし、背筋で上半身を支えながら作業をすることが多く、この無理な姿勢が日々の負担となっていた。その影響で前職ではあまり感じなかった肩こりなど、肩・首・背中の筋肉が常に緊張していることを感じている。また、疲れがたまってくると腰に「ピキッ」と電気が走るような痛みが出ることもある。
仕事中は集中しなければならない場面が多く、無意識のうちに瞬きの回数が減り、自宅では暗い中でスマホの画面を見てしまったり、疲れてコンタクトを外さずに寝てしまったりすることもあり、目の疲れがどんどんたまってしまう。目の疲れがひどくなると、やがて激しい頭痛に変わり、その痛みが悪化すると立っていても座っていても横になっていても辛い。
吐き気を伴うこともある。
頭痛と吐き気は寝ても治るわけではなく、目の奥がズキズキ刺すように、頭はずきんずきんと脈打つように痛む。首肩がガチガチになっている自覚症状も感じていたため肩こりや、首こりに眼精疲労が合わさって頭痛が起きていると感じていた。
患者様自身もともと痛みに弱いと感じていたこともあり、頭痛が出るとすぐにロキソニンを飲んで痛みを抑えている。多い時は1日に3回服用することがある。
症状は常にあるわけではないものの、定期的に繰り返し現れ、そのたびに日常生活や仕事に大きな支障をきたしていた。
こうした肩こりや首こり、眼精疲労、そして辛い頭痛に悩まされるたびに、ベッドスパやマッサージなどを受けることで改善しようとしていたが、症状がすっきり改善するような自分に合った施術に出会うことはできなかった。
そんな時、薬に頼らずに根本改善が目指せるカイロプラクティックを紹介されて藁にもすがる思いで来院された。
左仙腸関節に可動制限
腰部起立筋の過緊張
左PSIS上部に窪んだ浮腫
初回施術の1週間後(2回目のアジャストメント)、腰部における「ピキッ」とした痛みを感じることがなくなり、腰の違和感や痛みが軽減した。その後、3週間後(4回目のアジャストメント)経過したの時点では、肩こりや背中のこわばりは依然として残存していたが、首周囲の筋緊張が緩和し、頭痛の頻度も減少していた。
それに伴い、ロキソニンの服用回数も減少し、以前よりも薬に頼らずに過ごせる状態が見られた。
6週間後(6回目のアジャストメント)までの間に、5回目の施術後から次回の施術までやや期間が空いたものの、その間に頭痛が発生することはなかった。頭痛が起こりそうな予兆があっても軽度の違和感程度で治まり、少し休むことで違和感は自然に消失した。また、この期間中、鎮痛薬の服用は一切なく、施術後の数日間は特に眠りが深く、睡眠の質が向上していることを患者自身が実感していた。
14週間後(10回目のアジャストメント)の時点では、首や肩の重さやこりの自覚症状が大幅に軽減し、日常生活において首や肩のこりを意識することがなくなった。施術開始前は、多い時には週に1回の頻度で強い頭痛が発生し、そのたびにロキソニンを服用していたが、施術を重ねることで強い頭痛はほとんど起こらなくなり、鎮痛薬を服用しない日々が続いていた。さらに、軽度の頭痛が発生した際にも、薬に頼ることなく自然に軽快するようになり、頭痛に対する不安感も軽減していることが確認された。
本症例は、社会人になってから目を酷使する機会が増え、長時間の前傾姿勢や背筋を使った姿勢保持が求められる業務が日常化したことにより、慢性的な頭痛、眼精疲労、肩こり、首こり、背中のこり、腰痛が発生したと考えられる。
特に、仕事の集中時に瞬きの回数が減ることや、暗い環境でのスマートフォン使用、コンタクトレンズを外さずに寝てしまうなど、目に過度な負担をかける習慣が、頭痛の誘発因子となっていた可能性が高い。
頭痛が悪化すると目の奥がズキズキと刺すように痛み、頭全体が脈打つように痛むという特徴的な症状を訴えていた。このような症状は、交感神経の過活動による血管収縮や筋緊張が起きていたと考えられる。
その原因として頸椎と左骨盤部のサブラクセーションによる神経伝達の障害が関与していると推察される。特にC1(第一頸椎)のサブラクセーションは、副交感神経の働きを妨げることで、交感神経優位の状態を慢性化させ、頭部や目の周囲の血流低下を引き起こす。これにより、眼精疲労や頭痛が悪化し、さらに吐き気を伴うような状態へと進行していたと考えられる。
また、長時間の不良姿勢による骨盤の不安定性も、頭痛の慢性化に影響を及ぼしていた。左仙腸関節のサブラクセーションにより骨盤が歪むことで、脊柱全体のバランスが崩れ、頸椎や上部胸椎へのストレスが増大。これが筋緊張をさらに強め、神経系に過剰な負担をかけていた可能性がある。
アジャストメントでは、C1と左仙腸関節へのアジャストメントを中心に行ったことで、神経伝達が正常化し、頭痛の頻度や強度が徐々に軽減。
特に、頭痛が発生しそうな予兆があっても軽度の違和感で治まり、ロキソニンの服用頻度も大幅に減少していることから、神経系の機能が回復し、身体本来の治癒力が適切に働き始めたことが示唆される。
今回の症例は、あちこちにアプローチせず、神経系に絞った施術の重要性を示す典型的な症例であり、同様の症状に対しても効果的な介入が可能であることを示唆している。アジャストメントによってサブラクセーション(根本原因)が取り除かれて神経伝達が正常化し、自然治癒力が最大限に発揮されることを裏付けた症例である。


執筆者塩川カイロプラクティック塩川 雅士D.C.
1980年、東京都生まれ。17才で渡米後、2004年パーマーカイロプラクティック大学を優等で卒業。D.C.の称号取得。米国ナショナルボード合格。日本カイロプラクティックリサーチ協会(JCRA)役員。2005年からカイロプラクターを育成する学校の運営と講師に携わり、現在、年間約300時間の講義やセミナーなどの活動を全国で精力的に行っている。