

2年前に突然、右足の痛みと右大腿外側から下腿、母趾にかけての痺れにより歩くことが困難となり、病院を受診、椎間板ヘルニアと診断され、先生から症状が重いと言われ手術を受けることを薦められた。手術後、痛みは軽減したが右下肢の痺れは変わることがなく、その後、リハビリを受けることになったが痺れは残存し変化がなかった。その後もリハビリを3ヶ月ほど続けるも症状が停滞し、子供の野球の送迎などで忙しくなり、痛みはあるもなんとか日常生活が送れる為に、徐々にリハビリには行かなくなってしまった。
しばらくすると、歩行時痛が再発するようになり、歩幅も狭く歩くスピードも遅くなってきた。症状の増悪により不安な気持ちがあったが様子をみていた。その他にも、手足の冷え性、夕方の頭痛症状を患っていた。
来院の2日前、夜間に寝返りを打った際に右下肢の痛みにより目が覚めた、立ち上がろうと右足をついた瞬間に右股関節に激痛が走った。その後、様子をみるも、靴下を履くこと、しゃがむことが困難となり、痛み止めを内服したが軽減しなかった。
困って友人に相談したところ、マッサージをするだけではなく、神経の検査をして治療してくれる先生がいると紹介され当院へ来院する。
右耳介上方
仙骨スポンジ状浮腫
右PSIS内側くぼんだ浮腫
下腿浮腫
右起立筋策状硬結
初診時、右下肢痛のために疼痛性跛行が見られ、検査にて第一頸椎と右腸骨の可動制限が認められた。体表温度検査では上部頸椎と中部胸椎と骨盤部に明らかな温度差がみられ、項部と右起立筋に過緊張が確認できた。
レントゲンでは、ファーガソン角が25度、正常角と比べ減少しており腰椎の前彎が減少している。椎間板はD2~3の変性がみられた。
治療計画として来院頻度は週2回4ヶ月のケアを提案した。
1週目(1回目のアジャストメント)後、一時的に頸部の緊張は軽減したがその日の夜に身体が重く全身倦怠感により翌日起き上がるのが億劫であったとのこと、また、起床時に右腓腹の攣縮が発現した。
3週目(5回目のアジャストメント)後、荷重時の右股関節の疼痛が軽減し、腓腹の攣縮の頻度が軽減する。
4週目(7回目のアジャストメント)後、右股関節が屈曲90°を超え足を跨ぐ動作が可能となり、日常生活での運転の乗り降りが楽になった。
7週目(11回目のアジャストメント)後、下腿が攣縮することがほとんどなくなり、日常生活で歩行や座るに支障が少なくった。
10週目(15回目のアジャストメント)、頸部の過緊張が軽減し頭痛がでなくなる、足の痺れは継続しているが歩きやすくなったとのこと。
12週目(18回目のアジャストメント)後、足の痺れの範囲が右下腿部全体から母趾背側へと変化し程度が軽減したとのこと
14週目(20回目のアジャストメント)、仕事で重いものをもった際に、再度右下腿の痺れが増大し腰部痛を発現する。
17週目(24回目のアジャストメント)後、足の痺れがほぼ消失し日常生活で気にならなくなる。
22週目(27回目のアジャストメント)旅行へ行き、新幹線で長時間座ることができるようになる。
31週目(34回目のアジャストメント)仕事や家事での疲労感あるも、痺れ症状が消失し日常生活に支障がなくなりメンテナンスを希望し、週1回の来院を継続する。
今回のケースは、副交感神経サブラクセーションによる自律神経の不調が手術後に継続する右足の痺れであったが原因として考えられた。
自律神経は、交感神経と副交感神経による二重支配を受けている。サブラクセーション(神経圧迫)によりどちらかが阻害されることで一方の機能が過剰に働くことにより問題が起こる。副交感神経サブラクセーションにより、筋肉の過緊張や鋭い痛み、末梢血管収縮による血圧上昇や血行障害による冷えなどがみられる。股関節の過剰緊張や鋭い痛み、頭痛や肩こり、手足の冷えを訴えていることから該当したと考察した。
患者は、痺れ症状を右母足趾の内側に特に訴えており、解剖学的な観点から腰椎5番の神経の障害をみることができた、しかし、足関節の筋力や徒手による神経へのストレステストは陰性であり、痺れはあるも、いわゆる椎間板ヘルニアのような状態ではないと考え、その他の要素での椎間板への負荷を考えた。
椎間板は構造上、髄核と線維輪から構成され、脊柱のかかる負荷をショックアブソーバーの機能を果たし吸収する機能があり、髄核は水分を主成分とするゼリー状の組織、線維輪はコラーゲン組織を示しており、髄核が飛び出るのを防ぐ構造をしている非常に強固な組織であるが、後方の線維輪が薄く、靱帯による補強も前方と比べると後方は強度が弱いと言われ、体幹の前かがみで負荷がかかり、さらに、捻転動作で機能する線維は全体の約半分しかなく、残りはただねじれるだけの状態になるため捻りに弱い。
骨盤の右側が前方に変位している状態で、歩行や立ち座りの動作にて、右側の骨盤が前方から後方へ過剰な運動をすることが考えられる。これにより、骨盤が独楽のように動き、椎間板には捻じれの負荷がかかると考えることができる。
椎間板に負荷がかかることにより膨張で神経への圧迫が起こり痺れが発現していると考察した。
また、カイロプラクティックでは、交感神経の領域を胸腰椎(C6~L5)から、副交感神経の領域を上部頸椎と骨盤(後頭骨~C5、L5~骨盤)が機能的に影響していると考えていることからも副交感神経サブラクセーションを表している。
股関節に関しても、変形を除いて、重力に対して体を支える為に、大腿骨骨頭に対し骨盤が力を受ける形になっており、骨盤のサブラクセーションにより股関節に負担を引き起こしていると考えられる。
また、股関節の運動に関与する筋肉は腰椎と坐骨神経の支配領域であり骨盤の問題が神経的な観点からも影響していると考察できる。
ガンステッドカイロプラクティックでは、脳に対し神経による情報がサブラクセーションにより阻害され、自らを回復させる機能が妨げられることを取り除くことが重要と考えているが、それに加え構造的な側面からの関連性を考察するケースとなった。


執筆者鶴沢接骨院香山 大樹
千葉県千葉市出身。柔道整復師、鍼灸師、マッサージ師の資格を取得、整形外科、接骨院の勤務を経て、2008年6月に鶴沢接骨院を開業、外傷やリハビリを中心に勉強をしてきたが、臨床での不定愁訴への対応、根本原因へのアプローチを学ぶ為、シオカワスクールにて学びの機会を得て、カイロプラクティックの可能性に感銘を受け、現在インストラクターとして仲間とともにカイロプラクティックの素晴らしさを伝える為に従事している。