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ブロック注射を20回以上も打つほどの腰痛

ブロック注射を20回以上も打つほどの腰痛

40代女性
主訴
腰痛、下肢の痺れ
来院に至った経緯

15年前から右の臀部から大腿部にかけての痺れと、左の臀部から足先までの痺れの症状が出始めるようになった。右の股関節を曲げた時と、曲げた膝を内側に倒していく時にも痛みが出るため、座って仕事をすることが困難に感じている。

仕事はデスクワークで、東京まで片道2時間かけて電車で出社し、8時間座り仕事をしている。週の初め、火曜日あたりまでは座って仕事をすることが可能だが、週後半、水曜木曜あたりで座り仕事が耐えられなくなる。

 

整形外科で坐骨神経痛と腰椎椎間板ヘルニアと診断されてブロック注射も20回以上している。最初は注射で痛みも良くなり生活する事ができたが、だんだんと注射も効かなくなっていった。そこから自分でストレッチをしたり、週末にはホットヨガに毎週通い、YouTubeで坐骨神経痛に効く運動の動画を探して試してみたところ、ある程度緩和されていった。

自己ケアでどうにか症状の軽減をさせることはできているが、痛みの根本改善ができず、どうしても取れない痛みがあるため、その症状を消失させるためには自分ではこれ以上どうしようもできないと思い来院された。

 

睡眠はちゃんと取れており、頭痛などもない。長時間の座り姿勢は辛く、週の後半は立って仕事をしたいくらいだった。寝てても腰には違和感がある。立ち上がりや立ち姿勢では痛みが強くなることはない。

 

月曜から金曜までの仕事を痛みなくこなし、仕事に集中できるようになりたいという希望があり、当院のカイロプラクティックを選んだ理由は、しっかり状態の把握と検査をしてもらえると思ったからである。

初診の状態
  • 01

    右仙腸関節下方に窪んだ浮腫

  • 02

    左胸鎖乳突筋の過緊張

経過と内容

初回時では、症状が強く現れており、仙腸関節の可動性の左右差も強いことから、週2回のカイロプラクティック・ケアを提案したが仕事の関係により土曜日にしか来られないとのことで、週1回のケアからスタートした。

5週目(5回目のアジャストメント)では、アジャストメント後右に向きやすくなった。両方の臀部に痛みが残っており、両方の臀部を叩きたくなる。

6週目(6回目のアジャストメント)では、右下肢の痺れはなくなったが、左下肢の痺れと痛みがずっと残っている。疲れてくると両股にだるさが出てくるが、右の方が気になる。今まで月曜・火曜までしか仕事で座っていられなかったけど、今週は金曜まで座れるようになった。

7週目(7回目のアジャストメント)では、お盆休みに京都旅行で新幹線に乗り、降りたら左足に激痛が生じた。寝たら良くなったが、帰宅して自宅の庭いじりをしていたらところ、昨日ぎっくり腰を起こしてしまった。動き出しが痛くて立ち上がれない。

9週目(8回目のアジャストメント)では、1週間仕事を問題なくできるとのこと。この週以降、臀部〜下肢にかけての痛みや痺れの症状は再発しなくなった。

15週目(10回目のアジャストメント)では、子どもの頃から外反母趾の悩みと、慢性的な便秘の悩みを打ち明けられた。外反母趾は祖母も母もあるため遺伝だと親には説明され、遺伝なら仕方ないと納得していた。つま先まで蹴り出すことと拇指側で踏ん張ることができないことに困っている。慢性的な便秘は胃を押し上げてしまうほどで、1日1回出ることは長年なかった。現在の排便は3日に1回程度である。リスティングに関しては、変更せずそのままで継続した。

33週目(14回目のアジャストメント)では、慢性的な便秘と外反母趾によるつま先での蹴り出しの時の痛みは継続してある。


考察

本症例は、約15年前から続く腰部椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛、および両側臀部から下肢にかけての痺れを主訴とする40代女性に対して、骨盤部のサブラクセーションを中心にカイロプラクティック・ケアを行い、症状の改善を図ったものである。

 

初診時には、仙腸関節の可動性に著しい左右差が見られ、骨盤部の不安定性と腰椎への過剰な負担が疑われた。見立てとしては、右仙腸関節のサブラクセーションが下肢に続く神経の流れを阻害し、左右の仙腸関節の可動性の不均衡をもたらし、長期的に骨盤と腰部にストレスを蓄積させ、結果として椎間板へのダメージが推察される。

 

当初は週2回のケアが望ましいと判断されたが、実際には週1回のケアから開始され、施術を継続する中で段階的な改善が確認された。特に6週目には、右下肢の痺れが消失し、仕事中に座っていられる時間が延長するなど、日常生活における機能向上が見られた。

 

7週目に新幹線から降りる際の激痛と一過性のぎっくり腰を発症した。これは感覚神経が回復してきた証拠として、一時的に痛みが強く出たものである可能性が高いと考える。急性の腰痛に関しても腰部の緊張が抜けてきている中での庭の手入れが、腰部への急な負担となったのだろうと考える。その後のアジャストメントによって速やかな回復が見られたことは、傷ついた神経の回復がしっかりとされていることを示唆している。

 

9週目以降は坐骨神経痛の症状が再発することはなく、神経圧迫に伴うシグナルとしての痛みや痺れが安定していることからも、サブラクセーションに対する適切なアジャストメントと、継続的なアジャストメントが神経機能の正常化に寄与したと考えられる。

 

結果、脳と神経の情報伝達がしっかり行われるようになり、体の状態を自身の脳が把握できたことで自然治癒力が発揮され、症状の改善に至ったと考えられる。

 

一方、15週目以降には慢性的な便秘および外反母趾といった長期的・構造的な問題が新たに明らかとなった。これらの症状は、骨盤・腰部・足部の長年の不均衡や負荷蓄積によるものであり、症状自体は継続しているため、今後のケアにおいて注視していくことが重要だと考える。

 

本症例は、慢性的な臀部から下肢への症状に対する骨盤部のアジャストメントによって、神経機能の回復を通じて日常生活への支障を大きく改善できることを示した一例である。

 

20回以上の神経ブロック注射を行い、15年もの間苦しんでいた足の痺れが消失したことは、サブラクセーションを取り除いたことによって身体と脳が神経を通じて情報のやり取りが可能になったことを示している。脳は体の異常を神経を通じて把握できれば、神経を通じて対処をしっかり送ってくれるようになる。

 

この自然治癒力のサイクルがどんなに長く苦しんだ症状であっても再び発揮されるようになると確認できた素晴らしい症例であった。

髙村 悠二

執筆者OKAカイロプラクティック髙村 悠二

東京都出身。理系大学を卒業後、ミュージシャン・音楽講師として活動を始める。活動の中で解剖学や身体の使い方という視点からの上達法をSNSで見て、「体の仕組み」に興味を深め、整体の専門学校に入学。専門学校卒業後、整体師としても働き始め、勤務先でカイロプラクティックに出会う。より本格的な技術と理論を学ぶため、シオカワスクールに入学を決意し、CSセミナーCLセミナーを修了する。勉強していく中で、自分が音楽家として活動するのではなく、カイロプラクティックでサポートしていきたい気持ちが強くなり、音楽講師をやめ、OKAカイロプラクティックに入社。カイロプラクティックの素晴らしさを普及するため日々施術に臨む。シオカワスクールで後進の育成にも携わっている。

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