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パニック障害に伴う自律神経の乱れによる心身の不調

パニック障害に伴う自律神経の乱れによる心身の不調

動悸や不安に振り回されず、落ち着いて過ごせる時間が増えました!

20代女性
主訴
パニック障害、動悸、不安感、不眠、立ちくらみ、胃腸症状、顎関節症、疲労感
来院に至った経緯

数年前より、心身の不調が徐々に強くなり、日常生活に支障を感じるようになっていた。発端は職場環境による強い精神的ストレスであり、その頃から気分の落ち込みや不安感が目立つようになった。特に、人の声や大きな音といった刺激に対して過敏に反応するようになり、突然動悸が強くなったり、胸が締めつけられるような感覚が出現したりする場面が増えていった。

その後、不安感に加えて、不眠、立ちくらみ、頭痛、胃腸の不調、食欲低下、体重減少といった身体症状が重なり、体調の波が大きくなる傾向がみられるようになった。緊張状態が続いた後には強い疲労感が出現し、十分に休息を取っても回復しにくい状態が続いていた。

医療機関を受診した結果、これらの症状はパニック障害と診断され、薬物療法や漢方治療を含めた治療を受けてきた。治療により一部の症状が落ち着く時期はあったものの、不安感や動悸、不眠、胃腸症状といった不調は完全には安定せず、体調が不安定な状態が慢性的に続いていた。

また、子供の頃から便秘や下痢を繰り返しやすく、歯ぎしりや顎関節の違和感、立ちくらみなどもみられており、「以前から身体が常に緊張しているような感覚があった」との自覚もあった。精神的な症状が前面に出ている時期だけでなく、比較的落ち着いている時期においても、身体のこわばりや疲れやすさが抜けにくい状態が続いていた。

そうした中、当院に通院していた叔母が、本人の体調を心配し、「一度きちんと身体を診てもらった方が良いのではないか」と声をかけたことが来院のきっかけとなった。叔母自身がカイロプラクティックケアを受ける中で、神経の働きを整えることで体調が安定していく経過を実感していたこともあり、「精神的な問題だけでなく、身体の状態も含めて一度評価してもらってはどうか」と勧められたという。

これまで、症状ごとに対処を続けてきたものの、不安感や動悸といった精神面の症状と、睡眠や胃腸の不調、顎関節症といった身体症状が同時に現れる状態が続いていたことから、「今の自分の身体がどのような状態にあるのかを一度きちんと知りたい」という思いが強くなった。カイロプラクティックは過去にマッサージのような施術を受けた経験はあったものの、本格的な評価を受けるのは初めてであり、叔母の紹介をきっかけに、当院に来院された。

初診の状態
  • 01

    第一頸椎左横突起にスポンジ状の浮腫

  • 02

    頸部胸鎖乳突筋の過緊張

  • 03

    左上後腸骨棘上端内縁にくぼんだ浮腫

経過と内容

初診時の状態では、左仙腸関節には明らかな可動域制限があった。体表温度検査では、上部頸椎と骨盤部に明らかに左右の温度の誤差が確認された。また第一頸椎左横突起と左上後腸骨棘上端内縁に強い浮腫が確認され、頸部胸鎖乳突筋と腰部起立筋は過緊張の状態であった。

レントゲン評価では、椎間板をD1~D6という6段階で評価していく。腰の椎間板の段階は慢性的なD3レベルで重度の骨盤の傾きや過前弯で反り腰が確認された。首の椎間板の段階は6段階中3段階の慢性的なD3レベルが確認され、首の前弯カーブ(前カーブ)は消失してストレートネックとなっていた。

初期集中期の段階では週2回のケアを提示したが、学業が多忙で遠方からの通院で時間の確保が難しいかったため、無理のない範囲で週1回のケアから開始した。

3週目(3回目のアジャストメント)には、常に張り詰めていたような身体の緊張感が、わずかに和らいできていることを本人が自覚していた。特に、ケア後から数日間は動悸の出方が落ち着き、「音や人の声に対して過剰に反応する感じが少し減っている」との訴えがあった。不眠については大きな変化はまだみられなかったものの、夜中に目が覚めた際の不安感が以前よりも短時間で落ち着く傾向がみられた。

7週目(7回目のアジャストメント)には、日常生活における体調の波が以前よりも小さくなっている様子がみられた。立ちくらみや急な動悸が出現する頻度が減少し、外出時の不安感も軽減してきていた。また、胃腸の状態についても、便秘と下痢を繰り返す頻度が少なくなり、「お腹の調子が比較的安定している日が増えた」との報告があった。睡眠については、寝入りにかかる時間がやや短くなってきていた。

17週目(11回目のアジャストメント)には、精神的な緊張と身体症状の連動が弱まりつつあることが確認された。以前は不安感が強まると同時に動悸や顎の緊張が出現していたが、そのような反応が起こりにくくなっていた。不眠についても、途中覚醒はあるものの、目が覚めた後に長時間眠れなくなることは減少しており、睡眠の質そのものが安定してきている様子がみられた。

24週目(14回目のアジャストメント)には、全身の過緊張状態は明らかに軽減し、体調の大きな乱れが出にくい状態が維持されていた。動悸や強い不安感が日常生活の中で問題となる場面はほとんどなくなり、顎関節の違和感や頭痛も強く意識することは少なくなっていた。疲労感は残るものの、回復に要する時間が短くなっており、身体が休息を受け取りやすくなっている感覚が得られていた。

現在は、初診時にみられていた多岐にわたる症状は大きく落ち着き、日常生活および学業において大きな支障のない状態が保たれている。今後も神経機能の安定を維持し、体調の大きな波を防ぐ目的で、身体のメンテナンスとして定期的なカイロプラクティックケアを継続している。


考察

今回のパニック障害を伴う各自律神経系の諸症状は、交感神経が慢性的に過剰優位となった状態が長期間持続していたことを根本原因として出現していたと考えられる。

本症例では、動悸、不安感、不眠、音や刺激に対する過敏反応、胃腸症状、顎関節の緊張、立ちくらみなど、身体の複数の系統にわたる症状が同時にみられていた。これらはいずれも単独で発症したものではなく、「常に身体が緊張状態から抜けられない」という共通した背景を持つ症状である。

初診時の評価では、骨盤部および上部頸椎の双方に機能低下と浮腫が確認されていた。これらの部位はいずれも、副交感神経機能と深く関与する領域であり、ここに機能障害が存在していたことは、身体が休息・回復へ切り替わりにくい状態にあったことを示している。副交感神経の働きが十分に発揮されない状況では、交感神経の興奮が相対的に強まり、心拍数の上昇、不安感の増大、睡眠障害、消化機能の乱れといった症状が連鎖的に出現しやすくなる。

特に本症例では、精神的な不安や緊張が高まると同時に、動悸や顎の緊張、胃腸症状といった身体反応が即座に現れていた点が特徴的であった。これは、精神と身体が切り離された問題ではなく、自律神経機能を介して密接に連動していたことを示唆している。

骨盤部の機能低下は、体幹の安定性や内臓機能の調整に影響を及ぼしやすく、上部頸椎の問題は脳幹レベルでの神経調整に関与する。その両者に同時に負荷がかかっていたことで、交感神経優位の状態が固定化され、刺激に対して過剰に反応しやすい身体環境が形成されていたと考えられる。

アジャストメントにより、骨盤部および上部頸椎にかかっていた神経機能の負担が段階的に軽減されることで、副交感神経が働きやすい状態が整い、過剰に亢進していた交感神経活動が徐々に鎮静化していった。その結果として、動悸や不安感だけでなく、睡眠、胃腸機能、顎の緊張といった複数の症状が同時に落ち着いていく経過がみられた。

本症例は、パニック障害を含む多彩な自律神経症状が、特定の臓器や単一の症状の問題ではなく、神経機能全体のバランス破綻として出現していたことを示している。骨盤部および上部頸椎に存在していたサブラクセーション(根本原因)による神経機能低下を整えることで、身体が本来持つ調整力が回復し、症状が段階的に安定していった点は、自律神経系症状を捉えるうえで重要な示唆を与える症例である。

前田 一真

執筆者前田カイロプラクティック藤沢院前田 一真

1982年、神奈川県生まれ。シオカワスクール在学中から塩川カイロプラクティックにて内弟子として学ぶ。塩川満章D.C.と塩川雅士D.C.に師事し、副院長まで務める。2023年に前田カイロプラクティック藤沢院を開院。一人でも多くの人にカイロプラクティックの持つ無限の価値を知っていただくため、カイロプラクターとして尽力している。またシオカワスクールでは現役講師を務めており、後任の育成にも力を入れている。

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