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ストレス過多による自律神経失調症

ストレス過多による自律神経失調症

40代男性
主訴
自律神経失調症、頻脈性不整脈、動悸、不眠症、頭痛、高血圧(上160下110)、下痢(無痛)、逆流性食道炎
来院に至った経緯

子供の頃から運動が苦手でこれといった運動はしてこなかったが、30代になるとゴルフに夢中になった。最低でも週3回の練習と月3回のラウンドに行っていた。仕事はデスクワークで座りっぱなしだったため腰の張り感はあったが、ゴルフ場で歩いていると腰回りも軽くなる気がしていた。

40歳になった頃、仕事で中間管理職を任されるようになってから、強いストレスを感じるようになった。新入社員の育成も任され、日々の業務に、慣れない教育、上司からの無理難題で自分の時間がまったく無くなり、大好きなゴルフもできなくなった。

中間管理職になって2年が経つ頃、強いストレスの影響なのか、ゴルフをできなくなり運動不足の影響なのか、急激に体調が悪くなった。食道から胃にかけて上に引っ張られるような感覚になり、左胸の辺りが詰まり感と苦しさを感じるようになった。

睡眠の質も悪くなり、布団に入ってもなかなか寝付けず、気づくと2~3時間布団の中でゴロゴロしていることがあった。頭痛も頻発するようになり、頭痛が出る場所、頭痛の質、時間帯などバラバラで、急に頭痛に襲われることが増えた。

トイレに行くとなぜか毎回下痢になっていた。特に前日お酒を飲んだわけでも脂っこいものを食べたわけでもなく、お腹が痛いとかでもなく、トイレに行くたび下痢っぽかった。便の状態は健康を害していると顕著に表れると聞いたことがあったので、何日も続く下痢に不安になった。

会社の健康診断でも、さまざまな検査に引っかかり、大きな病院を受診するように勧められた。病院では、頻脈性不整脈、逆流性食道炎、高血圧(上160下110)と診断された。病院の先生からはストレスが原因だから、ストレスを解消しなさいと指導された。

ゴルフ以外、特にこれといった趣味もなかったので、なんとか時間を作って数年ぶりにゴルフ場に行った。久しぶりのゴルフはとても楽しく、心はとても晴れやかだったが、少し動くだけで動悸がすることに気づいた。動くと左胸の辺りが息苦しいような締め付けを感じ、怖くなり数年ぶりのゴルフはハーフラウンドで終えることになった。

自分でいろいろと調べてストレスの問題は自律神経が原因だと知って、近所で自律神経に効くと評判の針治療の先生に診てもらった。3か月くらい診てもらったが、症状は何も変わらず、仕事の多忙とゴルフができないことで日々のストレスが溜まっていった。

そんなときYouTubeで塩川満章先生の動画を見る機会があった。こんなすごい先生もいるのかと思い、ふと近くにお弟子さんとかいないかなと調べてみると、最寄り駅からほど近いところに塩川先生の治療院で副院長を務めていた先生がいると知り、ここなら良くなるかもしれないと期待されて当院に来院された。

初診の状態
  • 01

    第一頸椎左横突起のスポンジ状の浮腫感

  • 02

    頸部胸鎖乳突筋(特に左側)の過緊張

  • 03

    左仙腸関節の可動域制限

経過と内容

初診時の状態では、左の仙腸関節には明らかな可動域制限があった。体表温度検査では、上部頸椎と骨盤部に明らかに左右の温度の誤差が確認された。また第一頸椎左横突起と左上後腸骨棘下端に強い浮腫が確認され、頚部胸鎖乳突筋と腰部起立筋は過緊張の状態であった。

レントゲン評価では、腰の椎間板の段階は慢性的なD5レベルで重度の骨盤の傾きが確認され、腰部前弯カーブは消失していた。首の椎間板も段階は慢性的なD5レベルが確認され、首の前弯カーブ(前カーブ)は消失してストレートネックとなっていた。

初期集中期の段階では週3回のケアを提示したが、仕事の関係で週1回のケアから開始した。

9週目(8回目のアジャストメント)には、頭痛の頻度が減ってきた。毎回のように下痢っぽかったのが、普通の便も出るようになってきた。

18週目(17回目のアジャストメント)には、睡眠の質が良くなり布団に入れば、すぐに眠れるようになった。この頃には、頭痛や下痢はまったく気にならなくなった。また、血圧値も上135まで落ち着いてきた。しかし、下の血圧値は105と高い状態が続いていた。

28週目(25回目のアジャストメント)には、この頃には血圧値は上下とも落ち着いて平均値ほどになった。久しぶりにゴルフに行ったが、以前はハーフラウンドも回れずに動悸がしてしまっていたが、1ラウンド回っても動悸はまったく出なくなっていた。

42週目(33回目のアジャストメント)には、この頃には身体全体の調子が良くなり、病院での検査でも頻脈性の不整脈は確認されなかった。胃酸が逆流してくるような胸の詰まりや苦しさも出なくなっており、逆流性食道炎のことは本人も忘れているほどだった。

現在は、ほとんどの症状が落ち着いたが、身体のメンテナンスとして定期的なカイロプラクティックケアを続けている。


考察

今回の症例では、自律神経のバランスの乱れがさまざまな症状を引き起こしていた原因であったと考えられる。自律神経失調症などは、臓器などに器質的な要因が何もないときに付けられるケースが多くある印象である。

自律神経には、交感神経と副交感神経の2種類が存在している。交感神経とは日中活動するときに働く神経で、ストレスや緊張を感じた時に優位に働く神経になる。副交感神経は夕方以降、体を休めるときに働く神経であり、リラックスした時に優位に働く神経になる。

検査では、骨盤部と上部頸椎に強い反応がみられた。骨盤部と上部頸椎はどちらも副交感神経支配の部位となるが、そこにサブラクセーション(根本原因)があったことで交感神経が過剰に働いてしまい、自律神経のバランスを乱してしまったのだと考えられる。

サブラクセーションの主な原因は、外傷的なストレス、精神的なストレス、日常生活による化学物質のバランスの乱れ、これらの原因がいくつかの複合的要素によって起こるとされている。

不眠症は、交感神経が過剰に働くことで休まる神経が機能せず起こっていたものと考えられる。頭痛に関しては出る場所も、頭痛の質も、時間帯もバラバラだったことを考えるとホルモンバランス異常も起こしていたと考えられる。

無痛による下痢も交感神経が過剰に働いていた結果だったのだろう。腸の動きは副交感神経が優位なときに活発になるが、交感神経が過剰に働くと大腸で水分を十分に吸収できずに、排出機能だけが過剰に働くことでの下痢を引き起こしてしまうと考えられる。

逆流性食道炎は、自律神経のバランスが乱れると胃酸の分泌やタイミングに影響を与えてしまうが、交感神経が過剰に働くと胃酸分泌過多の状態になってしまう。また、消化管の運動が亢進することで胃酸が逆流していたと考えられる。

上下とも高い高血圧(上160下110)に関しては、通常であれば交感神経部位からアプローチをすることが好ましい。今回のケースでは、その他数多くの副交感神経の問題と思われる症状が出ており、副交感神経に絞ってアプローチをしたが、それが結果として高血圧にも良い変化を起こしたと考えられる。

頻脈性の不整脈や動悸も出ていたが、心臓などに器質的な異常がない場合に起こるケースでは迷走神経が関係している。検査で反応が強くみられた上部頸椎は迷走神経と密接な関係があり、不整脈や動悸を引き起こす要因となる。不眠症や逆流性食道炎などのさまざまな症状も合わせて考えると、今回のケースではやはり副交感神経の問題だったのだろう。

アジャストメントによりサブラクセーション(根本原因)が取り除かれ、自律神経のバランスが整った結果、さまざまな症状の改善に繋がったと考えられる。どのような症状であったとしても、その原因を特定する検査が何よりも重要であり、あらためて神経の流れを整えて体の情報を脳へ届けることの重要性が確認できる症例である。

前田 一真

執筆者前田カイロプラクティック藤沢院前田 一真

1982年、神奈川県生まれ。シオカワスクール在学中から塩川カイロプラクティック治療室にて内弟子として学ぶ。塩川満章D.C.と塩川雅士D.C.に師事し、副院長まで務める。2023年に前田カイロプラクティック藤沢院を開院。一人でも多くの人にカイロプラクティックの持つ無限の価値を知っていただくため、カイロプラクターとして尽力している。またシオカワスクールでは現役講師を務めており、後任の育成にも力を入れている。

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