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コロナ感染後の不眠症と原因不明の体調不良

コロナ感染後の不眠症と原因不明の体調不良

カテゴリ: 中島 恵不眠症
40代男性
主訴
不眠症
来院に至った経緯

新型コロナウイルスに感染し、40℃の高熱を経験した。一度は回復したものの、その後、体力が著しく低下し、15日ほど寝たきりの生活を余儀なくされた。呼吸の苦しさや動悸、胸の締め付け感、喉のつまり感、ふわふわとしためまいなど、日常生活に支障をきたす症状も残り、通勤や外出が困難になったため、休職することとなった。

最も強く不安を感じていたのは、眠れないことだった。夜に布団に入っても首の緊張や寝ようとすると脳が覚醒したような感覚になり目が冴えてしまい、リラックスできない。寝入りに3時間ほどかかってしまい1時間に1度は目が覚め、朝を迎えても熟睡感はなく、疲労は蓄積する一方だった。こうした症状が続くことで不安も増し、余計に眠れなくなる悪循環に陥っていた。

眠れないことで日中の活動にも支障が出て、集中力が続かず、外出することすら大きな負担になった。さらに、左耳の閉塞感や逆流性食道炎などの不快症状も重なり、心身ともに大きなストレスを抱えていた。

慢性的には腰や股関節の引っ掛かり感もあり、慢性的な腰痛もあったが、それ以上に病院で検査をしても原因がはっきりと分からずにいた体の不調と不安感がいつまで続くのかという悩みが、来院の大きなきっかけとなった。

少しでも生活リズムを整えようと、デジタルデトックスを行ったり、食生活を見直したりと色々試したが、改善にはつながらなかった。もともと趣味はトレイルランニングなど体を動かすことだったため、「再び安心して眠り、元気に走れる生活を取り戻したい」という強い思いを抱いていた。そこで、インターネットで情報を探していた際に塩川満章D.C.のYouTubeでカイロプラクティックを知り、さらに神奈川方面で当院をみつけ、来院に至った。

初診の状態
  • 01

    左上部頚椎の過緊張、浮腫感

  • 02

    腰部脊柱起立筋の過緊張

  • 03

    左仙骨翼の浮腫感

経過と内容

初診時の状態では、第一頸椎には明らかな可動域制限があった。体表温度検査では、骨盤部と上部頸椎に明らかに左右の温度の誤差が確認された。また左仙骨翼と第一頸椎左横突起に強い浮腫が確認され、胸鎖乳突筋と腰部脊柱起立筋は過緊張の状態であった。

レントゲン評価では、椎間板をD1~D6という6段階で評価していく。腰の椎間板の段階は慢性的なD5レベルで骨盤の傾きが確認された。首の前弯カーブ(前カーブ)は減少し、椎間板の段階は慢性的なD4レベルが確認された。

初期集中期では本来、週2回のケアが望ましい状態であったが、体調面を考慮して週1回のケアから開始した。

3週目(3回目のアジャストメント)には、初回からアジャストメント後の休息中に強い眠気を感じ、手足の先がぽかぽか温かくなる感覚があったと話されていた。

7週目(7回目のアジャストメント)には、来院時には寝付きに3時間かかっていたが、前回のアジャストメント後からは1時間程度で眠れる日が出てきた。
めまいや耳の閉塞感も1か月ほど出ていない。上部頚椎の過緊張は改善し前回からのアジャストメントが維持できてきていると考えられる。

20週目(19回目のアジャストメント)には、少し前に風邪を引いた状態で2時間ほど草むしりをしたところ、熱中症の症状が出現。その後、睡眠の質が低下し、就寝時に呼吸が急に荒くなって目が覚めることが多くなり、十分に眠れない状態が続いた。日中の外出も控えていた。

24週目(22回目のアジャストメント)
熱中症による体調不良で睡眠が妨げられたが、睡眠は浅いものの4時間程度は眠れるようになった。回復力が少しずつ戻ってきている兆し。

28週目(25回目のアジャストメント)
中途覚醒はあるものの、5時間程度の睡眠が可能になった。
日中に外を歩いても頭痛や熱中症のような症状は出ず、体の変化を実感していると話されていた。

現在も定期的なカイロプラクティックケアを継続しており、体調の安定が維持されている。


考察

今回の症状の多くは、自律神経の乱れが大きく関与していたと考えられる。自律神経は、日中に活動する交感神経と、夜休まるときに働く副交感神経からなり、体のバランスや睡眠、循環機能に深く関わっている。

検査では、上部頸椎の過緊張や浮腫、骨盤部の浮腫、腰部脊柱起立筋の過緊張が確認された。上部頸椎と骨盤部は副交感神経の働きに関連する部位であるため、この部位に神経の働きの乱れ(サブラクセーション)があることで交感神経が過剰に働き、体が常に緊張状態となっていたことが、眠れない、ふわふわしためまい、眼精疲労、胸部の違和感などの症状を引き起こしていたと考えられる。

特に睡眠障害は、交感神経が優位な状態が長時間続くことで脳が覚醒しやすく、布団に入ってもリラックスできない状態を招き、眼精疲労や頭痛も、上部頸椎の神経機能の乱れにより血流や神経伝達に影響が出たことが一因と考えられる。腰や股関節の慢性的な引っ掛かり感も骨盤のバランスが不安定となり神経の働きの乱れが重なった結果である可能性が高い。

サブラクセーション(神経の圧迫や働きの乱れ)は、外傷性のストレス、精神的ストレス、体内の疲労や毒素の蓄積など、複数の要因が重なることで生じる。今回のケースでは、新型コロナ感染による体への負担がきっかけとなり、その後の体力低下、睡眠障害、日常生活でのストレスが複合的に作用したものと考えられる。

上部頸椎や骨盤、腰部の神経機能を整えることで、自律神経のバランスが改善し、睡眠の質やめまい、眼精疲労、胸部の違和感、体幹・下肢の負担といった症状の軽減につながったと考えられる。
人間の体には自然に回復する力が備わっており、神経の流れを整えて体から脳へ正しい情報を届けることの重要性が分かる症例である。

中島 恵

執筆者前田カイロプラクティック藤沢院中島 恵

新潟県東蒲原郡出身。柔道整復師の免許を取得後、整骨院に勤務。様々な講習会に参加している中で本来のカイロプラクティックの考え方に興味を持つようになり塩川スクールを受講する。カイロプラクティックで地域や社会に貢献したいという思いが強くなり、日本のカイロプラクティックの発展に尽力してまいります。

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