薬なしでも、めまいが出なくなった!
最初は6年前にめまいが始まった。めまいは回転性のめまいで、酷いと世界が回っているような感覚に襲われた。めまいが出たきっかけは、当時住んでいたアパートが、深夜の騒音がうるさくて眠れなくなったことだった。深夜から朝方まで騒音に悩まされ、睡眠時間も短くなりストレスも溜まった自覚があった。
めまいが出た翌日から、旦那さんの声が聞き取りづらくなった。ちょうどめまいで耳鼻科に通っていたので聴力検査をしてもらったが、数値的な検査はまったく問題がないと言われた。静かな空間に行くとキーンという金属音のような高い音の耳鳴りが聞こえるようになった。逆に周りがザワザワしていると、聞きたい音だけが聞き取りづらい感じがした。
緊張でもしているのか肩がものすごく凝るようになり、午後になって首や肩が緊張してくると、決まって頭痛も出るようになった。呼吸も浅いと感じるようになった。便秘や下痢はなかったが、お腹の張り感も感じるようになった。食欲も低下して何も食べたくなくなった。病院では逆流性食道炎の気があると言われた。
両方の鼻が詰まる感じがして、耳鼻科の先生に相談すると副鼻腔炎だと言われた。先生からは慢性的なものだと言われたが、自分ではめまいが出るまでは鼻づまりはまったく気になったことはなかった。
今回、めまいなどの症状が出る前からあった症状は、2年前に婦人科検診で子宮内膜症と子宮筋腫と診断されたことだが、これに関しては何か自覚症状があるわけではなかった。子供の頃は、頻繁に風邪を引いたり、手足が冷たかったり、緊張すると汗を大量にかいたりということがあったが、めまいが出てからの体調不良は比較にならないほど辛いものだった。
めまいが出てからは、整骨院で筋肉の緊張を緩めてもらったり、針鍼灸院でめまいに効く針を打ってもらったりしたが、受けた翌日くらいまでは楽に感じるが、2日もすると元も戻ってしまった。
これまで症状が出るたびに病院で薬を処方され、薬の量も6種類も飲んでいた。なんとか薬に頼ることなく自然に治せる方法はないかと探していたところ、当院のHPに書いてあった自然治癒力という言葉を見て、自分が探しているのはこれだと直感が働き来院された。
胸鎖乳突筋の過緊張
左仙腸関節の可動域制限
左仙骨翼にスポンジ状の浮腫
頚部の椎間板にD6レベルと慢性的な段階が確認されたため、週3回のケアを提示したが、めまいで電車に乗るのも辛い状態で、とても週3回も来られる状態ではなかったため、初期集中期の段階では週1回のケアからスタートすることにした。
7週目(6回目のアジャストメント)には、食欲も少しずつ戻ってきて、ガス溜まりも気にならなくなった。肩こりや頭痛も気にならなくなった。
11週目(9回目のアジャストメント)には、めまいはほとんど出なくなった。電車やバスなど乗り物に乗ってもほとんど気にならなくなった。耳鳴りもまったく気にならなくなった。この段階でケアのペースを2週間に一度に広げることができた。
17週目(12回目のアジャストメント)には、めまいはまったく出なくなった。鼻詰まりもほとんど気にならなくなった。そういえば呼吸も深く吸えるようになったと本人も忘れていたほどだった。
24週目(15回目のアジャストメント)には、この頃には6種類も服用していたすべてのお薬を手放すことができた。手足も少しずつ血流が戻ってきている状態で、本人は汗の量も減った気がするとのことだった。
現在は、ほとんどの症状が落ち着いたが、身体のメンテナンスとして定期的なカイロプラクティックケアを続けている。
今回のめまいの原因は、上部頸椎のサブラクセーション(根本原因)によるものだと考えられる。人間の平衡感覚は主に、目からの情報、内耳からの情報、手足の感覚受容器からの情報がある。
特に注目したいのは第8脳神経(内耳神経)である。内耳神経は平衡感覚を支配している神経となる。この神経系に異常が生じるとめまいなどの症状が出やすくなってしまう。また耳鳴りの問題もあったが、耳鳴りとは聞こえなくなった音を過剰に拾おうとして脳が音の感度を過剰に高めてしまっている状態となる。
検査では上部頸椎だけでなく骨盤部にも反応があったが、どちらも副交感神経支配の部位となり、自律神経の問題も出ている状態であったと考えられる。
子供の頃から頻繁に風邪を引いていた問題も、自律神経のバランスが乱れていたことが考えられる。交感神経が優位になると顆粒球の比率が上昇し、副交感神経が優位になるとリンパ球の比率が上昇する。
この比率が乱れることは、体内の免疫力が低下することを意味しており、副鼻腔炎を助長させる要因にもなる。また自律神経のバランスが乱れることでリンパ液の分泌量にも異常が起こり、体が動いていないのにリンパ液が動くことによって、脳が体が動いているとさっかくしてめまいを引き起こしてしまったとも考えられる。
自律神経のバランスが乱れは、腸の蠕動運動にも関係し、不要なガス溜まりの要因にもなってしまう。また発汗異常とは、環境の変化に適応できていないことを意味している。自律神経の乱れによって、腸の蠕動運動にも支障をきたし、環境の変化にも適応しづらい状態となっていたのだろう。
腸の蠕動運動は副交感神経が優位なときに活発となるが、交感神経が過剰に働くことで腸の蠕動運動が低下して食欲低下を招いていたと考えられる。交感神経が過剰に働くことで、胃酸の逆流にも繋がっていたのだろう。
夕方以降になると感じる頭痛は緊張性の頭痛である。肩こりは骨格の乱れ、あるいは交感神経が過剰に働くことでの緊張からくる2種類が考えられるが、今回の肩こりは明らかに後者であった。
交感神経が過剰に働くことでの緊張状態が続く呼吸が浅い問題、交感神経の作用によって末梢の血管が閉じてしまう末端冷え性の問題など、自律神経の乱れはこれだけの症状を引き起こしていた。
検査によって問題の原因を特定することで神経の流れを整えて、体の情報を脳へ届けてあげることの重要性が分かる症例である。
執筆者前田カイロプラクティック藤沢院前田 一真
1982年、神奈川県生まれ。シオカワスクール在学中から塩川カイロプラクティック治療室にて内弟子として学ぶ。塩川満章D.C.と塩川雅士D.C.に師事し、副院長まで務める。2023年に前田カイロプラクティック藤沢院を開院。一人でも多くの人にカイロプラクティックの持つ無限の価値を知っていただくため、カイロプラクターとして尽力している。またシオカワスクールでは現役講師を務めており、後任の育成にも力を入れている。