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こめかみが引きつる顎関節症

こめかみが引きつる顎関節症

歯科医に顎関節症と診断された

60代女性
主訴
こめかみの引き攣り、右手・両脚のしびれ
来院に至った経緯

長年作家として執筆活動を行ってきた。ここ最近、身体の不調が現れ、次第に集中力が低下し、日常生活に影響を及ぼし始めていた。

特に、手足のしびれがひどくなり、朝目を覚ますときにその症状が最も強く感じられるようになった。寝ている間に体勢が悪くなっているのか、起床時には右手や足に強いしびれを感じ、しばらく動かすことができない状態となる。これが毎朝続くことにより、次第に不安を感じるようになった。

以前から整形外科に通い、脊椎狭窄症や腰椎狭窄症と診断され、治療を受けていたものの、症状に改善は見られなかった。治療法には限界があり、改善を期待する気持ちも次第に薄れていった。そのような中、歯科医を受診した際に顎関節症と診断され、顎の不調も加わり、ますます何が本当の原因なのかが分からなくなっていた。

さらに、最近では右のこめかみの上あたりにひきつるような感覚が続き、その周辺が常に緊張しているように感じられた。そのためか物事を考える際に集中しづらくなり、以前のようにスムーズに執筆が進まなくなっていることが悩みであった。

しびれやひきつりの本当の原因がどこにあるのかを知りたくなった。これまでの治療法に疑問を感じていたため、再び執筆に集中できる日々を取り戻したいと考え、インターネットで当院を知り、来院に至った。

初診の状態
  • 01

    右環椎横突起周囲の浮腫

  • 02

    頚部の可動制限

  • 03

    左仙腸関節の可動制限

経過と内容

初診時の状態では、左の仙腸関節には明らかな可動域制限があった。体表温度検査では、骨盤部と上部頸椎に明らかに左右の温度の誤差が確認された。また左仙腸関節と第一頸椎右横突起に浮腫が確認され、腰部起立筋と右胸鎖乳突筋は過緊張の状態であった。

レントゲン評価では、腰の椎間板の段階は慢性的なD5レベルが確認された。首の椎間板の段階は慢性的なD5レベルが確認され、首の前弯カーブ(前カーブ)は減少傾向でした。

初期集中期の段階では週3回のケアを提示したが、仕事の都合もあり週1回のケアを3か月の必要性を理解してもらい開始した。

4週目(3回目のアジャストメント)には、右こめかみの引き攣る感覚が軽減してきた。おせちを準備しているときだけ左手にしびれがあったが、今は落ち着いているとのこと。

7週目(6回目のアジャストメント)には、右こめかみの引き攣る感覚がさらに軽減し頻度も減ってきた。右脚の痺れが軽減してきた。

11週目(10回目のアジャストメント)には、右こめかみの引き攣る感覚は気にならなくなった。手と右脚のしびれは気にならない。長時間歩いた際に左脚がたまにしびれる。

29週目(21回目のアジャストメント)には、右こめかみの引き攣る感覚がないため、仕事に集中出来るとのこと。長時間の歩行でも左脚がしびれることもなくなった。

現在は、ほとんどの症状が落ち着いたが、身体のメンテナンスとして定期的なカイロプラクティックケアを続けている。

 


考察

今回のこめかみが引きつる感覚の問題は、第一頸椎の極端な可動域制限によるものだと考えられる。第一頸椎は特殊な構造(輪っか状)をしており、脳幹から出る脊髄が中を通っているとても重要な部位となる。

顎関節症もあったが、顎関節は人体の関節の中で最も小さな関節の一つであり、首のバランスの影響(特に第一頸椎)を大きく受けてしまう。アジャストメントにより第一頸椎が安定して結果、顎関節の安定にも繋がったのだろう。

骨盤部にも顕著な可動域制限がかかっていたが、人間の土台である骨盤部の乱れは第一頸椎にも負担をかける要因にもなる。人間の背骨は24個あるが、24階建てのビルと想定した場合、土台である骨盤部は建物で言うと基礎の部分にあたる。土台である基礎部分の揺らぎは、上に行けば行くほど大きな歪みを生む原因にもなってしまう。

また上部頸椎と骨盤部は、どちらも自律神経の副交感神経支配の領域となる。副交感神経は人間が睡眠時、あるいはリラックスなど休息時に働く神経であるが、寝ている間の食いしばりや歯ぎしりは交感神経のスイッチが切れずに、睡眠時にも常に緊張状態が続いていることを意味している。それが側頭筋の過緊張にも繋がっていたと考えられる。

腰痛に関しては、整形外科で診断された通り腰椎4番にすべり症があるため、腰部に対してはアプローチできないが、分離すべり症の多くは問題個所が分離してしまうほどの負担をかけている原因が存在しており、ほとんどの場合は骨盤部から負荷がかかった結果である。

今回の腰痛に関しても、腰部に負担をかけていた原因は骨盤からだったと考える。アジャストメントにより骨盤部が安定することで、腰部の安定性にも繋がり、神経の負担が解消されたのだろう。

しっかりとした検査の基、神経系を絞ってアプローチを続けたことが、今回の結果に繋がったと考えられる。問題となっている部位を見つけ出し、神経系を絞ってアプローチすることの重要性が分かる症例である。

金城 寿生

執筆者塩川カイロプラクティック治療室金城 寿生

1989年、沖縄県生まれ。柔道整復師の免許取得後に上京。接骨院やクリニック勤務を経験。2022年東京カレッジ・オブ・カイロプラクティック(旧豪州ロイヤルメルボルン工科大学 日本校)卒業。塩川スクールにてGonstead seminar修了。研修を経て塩川カイロプラクティック治療室に入社。勤務しながら、インストラクターとしてカイロプラクター育成に携わっている。

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