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きっかけなく痛み始めた右肩       

きっかけなく痛み始めた右肩       

毎朝のルーティンが戻ってきました

50代女性
主訴
右肩の痛み
来院に至った経緯

健康維持を目的に毎朝ヨガをすることがルーティンになっていた。いつからか右肩の前側に違和感を覚えるようになり最初は「少し使い過ぎただけかもしれない」と様子を見ていたが、ヨガをしている最中床に手をつくポーズで痛みがはっきりと出るようになって来たことで、思うように体を動かせない状態が続いていた。腕を上げ下げする動作自体には問題はないものの前後に動かしたときにピンポイントで痛みが出るという感覚があり、その原因が分からないことに不安を感じていた。

これまで肩を大きく痛めた経験はなく「なぜ急に痛くなったのか分からない」という戸惑いが強かったという。

過去には右肘にテニス肘の症状が出たことがあったが、現在はほとんど気にならない程度まで落ち着いている。一方で右膝には動き出しの際にズキッとした痛みを感じることが時折あり、腰についても8年ほど前重いものを持ち上げた際にぎっくり腰を経験していた。

当時は整形外科を受診しレントゲン検査では骨に異常はないと言われたものの、それ以降も天候が悪い日などには腰の不安定さを感じることがあり「完全に治った」という実感は持てずにいたという。これまでは主に鍼治療を受けながら体のケアを続けてきたが、最近になって右側の顎のかみしめが強くなっていることにも気づき、違和感が気になり始めた。

以前は自宅でYouTubeを見ながらヨガを行っており、その頃は体の不調をあまり意識せずに過ごせていた。しかし、肩の痛みが出てからはヨガを控えるようになり「体を動かさないことでかえって調子が崩れていくような感覚」が強くなっていったという。

またこれまでの体の経過を振り返る中で、右肘、右膝、腰、右肩、右顎と、痛みや違和感が出る部位がほとんど右側に集中していることにも気づき不安が増していった。さらに20年前、階段を踏み外して右足首を内反捻挫した経験があり「あの時のケガが今の体の状態に影響しているのではないか」と気になっている。

現在は日常生活に大きな支障が出るほどの強い痛みではないものの、年齢的にも「そろそろ場当たり的な対処ではなく体をきちんと整えていきたい」と考えるようになった。そうした中で情報を調べていくうちに、当院のホームページに掲載されていた肩に関する内容を目にし「今が自分の身体に向き合うタイミングなのかもしれない」と感じ来院を決められた。

初診の状態
  • 01

    頚胸移行部のうっすらとした浮腫

  • 02

    右SCMの緊張

  • 03

    左仙腸関節付近の浮腫

経過と内容

腰部にD5レベルの慢性度が確認されたことから本来は週2回のケアを提案したが、ご家庭の事情も考慮し無理なく通院可能な週1回のペースでケアを開始した。
初回のアジャストメント後には強い眠気を感じられていた。

2週目(2回目のアジャストメント)には、肩に対する直接的なケアは行っていなかったものの、肩の可動域に変化を感じられるようになった。また痛みの部位が右肩前面から側面へと移動し、ピンポイントの痛みではなく帯状に広がるような感覚へと変化していった。

3週目(3回目のアジャストメント)には、肩の痛みは全体的に軽減傾向を示した。これまで巻き肩の影響で肩の水平伸展が行いにくかったが、前回の施術以降動かしやすさを実感されている。一方で腰部に関しては依然として不安定さが残っているとの訴えがあった。
ただしまだ多少の揺れはあるものの立位や歩行時における右足首の安定感が出てきたとのことであった。

8週目(6回目のアジャストメント)には、重い物を持ち上げた影響からか腰部の緊張が一時的に強まっていた。

9週目(7回目のアジャストメント)には、頚部の緊張がやや強くみられたものの骨盤の可動性は徐々に安定してきている様子が確認された。

12週目(10回目のアジャストメント)には、仙骨部にみられていた浮腫感は消失し棘突起間に浮腫と可動制限が顕著であったL5レベルへと主なケアの焦点が移行した。

現在では肩の症状は痛みもなく気にならない程度に落ち着いているが、症状の改善だけでなく身体全体のコンディション維持を目的として定期的なカイロプラクティックケアを継続している。


考察

本症例における右肩前面の痛みは肩関節局所の構造的問題というよりも、脊柱全体の補正による力学的バランスと神経機能の乱れが背景にあったと考えられる。

レントゲン上、L5/S1にD5レベル、L3/4にD3レベルの慢性変化が確認され腰椎前弯の増強およびジョージズラインの乱れも認められたことから、腰部椎間板には長期的な機能不全が存在していたと推察される。さらに左腸骨PI、仙骨部の浮腫、左短下肢といった所見は、骨盤帯の不均衡が持続していたことを示唆している。脊柱は骨盤という土台の上に成立しているため、骨盤の慢性的な不安定性は下位腰椎への持続的負荷を生みその影響は胸椎、頚椎へと連鎖的に波及する。

実際に本症例では、肩に直接的な処置を行っていない段階から可動域の改善や痛みの質の変化がみられた。これは局所の炎症が主因というよりも、神経系の機能的な抑制や防御反応が関与していたことを示唆している。神経伝達のバランスが整うことで、身体が安全装置としてかけていた可動域制限が段階的に解除されていった過程と捉えられる。

またガンステッドのケースマネジメントでは、肩前面の痛みはC1、側面はC5・C6、後面はC7・T1との関連が示唆されている。本症例では当初、右肩前面にピンポイントの痛みが存在し、その後側面へと移行している。この経過は、上部頚椎から下部頚椎にかけての神経機能が段階的に変化していった可能性を示しており、単なる局所の筋・腱障害では説明しきれない神経学的背景を裏付ける所見と考えられる。

上部頚椎へのアジャストメントは、副神経をはじめとする肩周囲筋群に関与する神経伝達を正常化させる役割を担う。これにより僧帽筋や肩甲挙筋、棘上筋・棘下筋といった肩の安定性と可動性に重要な筋群が本来の機能を取り戻し、肩への負担が軽減していったと考えられる。とくにC1は副交感神経と関連しており、過緊張状態にあった前方組織へのストレスを減少させ、頚部‐肩甲帯の協調性を高めた可能性が高い。

本症例は表面的には「肩の痛み」という局所症状であっても、その背景には慢性的な腰部椎間板変性、骨盤の不均衡、上部頚椎機能不全といった多層的な問題が存在していたことを示している。症状は比較的急性に出現したように見えても、その土台には長年かけて形成された神経学的・力学的ストレスの蓄積がある。

アジャストメントにより骨盤から上部頚椎に至る神経伝達の流れが再構築されたことで局所の防御反応が解除され、肩の痛みは結果として消失へ向かったと考えられる。局所に現れた症状のみを追うのではなく、骨盤を起点とした脊柱全体の評価と神経機能の回復を図ることの重要性を改めて示す症例であった。

大木 信之

執筆者塩川カイロプラクティック大木 信之

千葉県成田市出身。初めてのカイロプラクティックを受診後カイロプラクティックの可能性を直感し、長年従事した仕事を辞め4年制の東京カレッジオブカイロプラクティックに入学。様々なテクニックを学ぶ中で最も本質的なガンステッドカイロプラクティックを追求していくことを決意する。卒業後名古屋市内のガンステッドカイロプラクティック専門院を経て塩川カイロプラクティックに勤務。

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