
”もう肩こりは一才気になりません。逆流性食道炎まで良くなりました”
普段からデスクワークが多く、長時間同じ姿勢を続けることが日常になっている。その影響もあり、慢性的な肩こりや首こりに悩まされるようになったのは、もう何年も前のこと。特に仕事が忙しくなると首や肩のハリが強くなり、ひどいときには頭痛や倦怠感まで感じることもあった。しかし、中学生の頃に側弯症と診断されて以来、両肩の高さが違うことや姿勢の悪さについては半ば仕方がないものと受け入れていた部分もあり、「生まれつきの体質だから」「デスクワークをしている限り仕方がない」と自分に言い聞かせながら、長年放置してきた。
これまでにも、マッサージや整体に通うなど、できる範囲で対処を試みてきた。しかし、いずれもその場しのぎの対応にとどまり、しばらくするとまた同じような状態に戻ってしまう。「結局根本的には変わらないのではないか」と諦めの気持ちが芽生える一方で、少しでも楽になりたいという思いから、定期的にケアを受けるという生活を続けてきた。
そんな中、5年前に大腸がんを患い、治療のために薬物療法を受けることになった。幸い治療は成功し、がんそのものは克服することができたものの、その後遺症として手足の末端にしびれが発症する。手に関しては時間の経過とともに回復したものの、足のしびれは完全には消えず、今でも不快感を伴う状態が続いている。さらに、逆流性食道炎の症状も現れ、食事のたびに胸焼けや違和感を覚えるようになった。
昔から悩んでいた首や肩のこりに加えて、足のしびれや消化器系の不調といった複数の問題が重なることで、日々の生活の質が低下していると感じるようになった。このままではいけない、今度こそ根本的に改善できる方法を見つけたいと考えるようになり、改めてさまざまな治療法を調べる中で、カイロプラクティックにたどり着く。「身体のバランスを整えることで、これまで悩まされてきた症状が少しでも改善するのではないか」と期待を抱きながら、当院を訪れることを決意した。
右の仙腸関節可動域制限
右肩が左に比べかなり上がっている
側弯による脊柱起立筋の膨隆と緊張
腰部、頸部両方をとっても椎間板がD4~5のレベルになっており、慢性化が進行していることから本来は週に2,3のペースで来院を推奨したいが、仕事の都合も考慮し、週1回の来院頻度で提案しケアを開始した。
3週目(3回目のアジャストメント)では、長年感じていた首こりがあまり感じられないようになったと本人より深刻がある。下部頚椎のブレイク自体は大きく変わりないが、頚椎1番の浮腫感と可動域制限が当初よりも解消されてきている。
4週目(4回目のアジャストメント)では、下痢と逆流が良くなってきた感覚があるとのこと。また睡眠の質も向上した感覚がある。副交感神経のアプローチに絞っていたことが功を奏している。
5週目(5回目のアジャストメント)では、足の痺れの感覚が変わってきている。もともとは痺れの感覚もわからない状態になりかけている、いわゆる麻痺状態になってきていたが、痺れをくっきりと感じるようになってきたとのこと。
12週目(12回目のアジャストメント)では、アトラス周囲の浮腫感や可動域制限、ブレイクがかなり減少してきており、下部頚椎のブレイクと浮腫が目立つようになった。そのため頚椎のリスティングをC7に変更し、胸椎のリスティングも追加している。
17週目(17回目のアジャストメント)では、今までの中でも首肩こりはほとんど感じていなく、デスクワークが多くなったとしても睡眠を取れば首こりが解消されやすくなったとのこと。また、逆流はもう出ていなく、便の調子も問題ない。
現在はメンテナンスを継続している
今回の患者様の場合、主訴としては首の凝り感でありました。それだけにフォーカスすれば首だけをやればいいという考えになったしまいそうです。ところがよく深ぼって話を聞いてみると他に逆流性食道炎や下痢といった消化器系の問題も含まれています。
このような際には自律神経の問題も加味して、ケアを進行する必要があります。
自律神経は交感神経と副交感神経がありますが、交感神経は車に例えるとアクセルの部分であり、副交感神経はブレーキの部分にあたります。副交感神経のサブラクセーションにより自律神経のバランスが乱れ、交感神経が過剰に働くことで消化機能が亢進し過ぎてしまうことがあります。副交感神経の圧迫により腸での水分吸収がうまく行われないため、腸の動きが異常に高まってしまったことで、水分量が多い下痢が発生してしまいます。また、胃酸が過剰に分泌されれうことからも逆流性をともなってしまうのです。
また上記の通り交感神経が過剰になると、末端の血行が不良になったり
筋肉が緊張状態になっしまうため肩首こりも同居したとも考えられます。現に、副交感神経に絞ってアジャストメントを進行していくと、首肩こりに関しても解消され、同時に消化器系の問題も順調に回復していきました。
またがん投薬(シスプラチン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ボルテゾミブなどが代表的)の副作用である痺れに関しても、薬によって麻痺してしまった末梢神経が回復したことにより、今までにない感覚を生み出しており、今後も痺れ感に注目してケアを続行したいです。
肩こりや首こりという題材だと、どうしても症状にフォーカスしがちになってしまいますが、問診をしっかりと行い、患者様の背景を理解した上で今回のように体全体を見てアプローチをすることが非常に重要です。結果的にそれが、多くの問題に対してアプリーチを可能にします。そのことを改めて感じることができた症例でありました。
執筆者塩川カイロプラクティック治療室関野 貴友
1999年、大阪府生まれ。19才より東海大学トレーナー専攻及び東京衛生専門学校のダブルスクールを行い、共に優等で卒業。鍼灸あん摩マッサージ指圧師を取得。のちに睡眠専門治療室NEOCHIを開業。2023年よりシオカワスクールのインストラクターを務め後進の育成にも力を入れている。