
何をしても眠れなかったのに、気づけば朝までぐっすり眠れるようになった!
ここ数年、不眠症が悪化し、日常生活に深刻な影響を及ぼすようになった。寝つきが悪く、ようやく眠れたと思ってもすぐに目が覚めてしまい、朝まで何度も中途覚醒を繰り返してしまうようになった。
疲れているのに眠れないことがストレスとなり、夜になると「また眠れないのではないか」と不安が募るようになった。睡眠時間が短く、眠りも浅いため、朝起きても疲れが抜けず、日中は倦怠感が続いていた。仕事中も集中力が続かず、ボーッとしてしまうことが増え、些細なことでイライラしやすくなった。
不眠が続くにつれて、不安感や動悸、めまい、立ちくらみといった症状も現れるようになった。特に疲れが溜まった日には突然心臓がドキドキと速くなり、息苦しさを感じるようになった。めまいや立ちくらみも頻繁に起こり、ふとした瞬間に意識が遠のくような感覚に襲われることがあった。これらの症状が出ると、「自分はどこか悪いのではないか」という不安に駆られ、ますます眠れなくなるという悪循環に陥っていた。
頭痛にも悩まされており、午後から夕方にかけて両側のこめかみを締め付けられるような痛みが頻繁に発生するようになった。特に右側の痛みが強く、ひどいときには仕事にも集中できず、やる気が削がれてしまうこともあった。食いしばりも強く、朝起きると顎周りに違和感や疲労感が残っており、歯科ではマウスピースを勧められたが、大きな改善には至らなかった。
慢性的な副鼻腔炎もあり、常に鼻が詰まっているような感覚があった。耳鼻科では「鼻の構造が曲がっているため詰まりやすい」と言われたが、最近では寝ているときの呼吸にも影響が出ているように感じていた。口呼吸になることで喉が乾燥しやすくなり、睡眠中に何度も目が覚める一因になっているのではないかと考えていた。
長年続く腰痛も、不眠が悪化するにつれて痛みが強くなった。座っているときに腰の奥が重だるくなり、寝るときも腰の違和感が気になってしまう。特に寝返りを打つときに痛みを感じることが多く、腰が緊張しているような感覚が続いている。寝ている間に腰の不快感で目が覚めることもあり、さらに睡眠の質が低下する要因になっていた。
眠れなくなってからは、便秘と下痢を繰り返すようになり、腸の調子が安定しない日が続いていた。ひどいときは3日間以上排便がなく、ようやく出たかと思うと今度は急に下痢になってしまった。この不規則なリズムが続くことで、食事を摂ること自体がストレスに感じることもあった。
これまで整体や鍼灸院などに通い、一時的に症状が軽減することはあったが、根本的な改善にはつながらなかった。マッサージを受けても数日後には元の状態に戻ってしまい、「このまま不眠症が続いたらどうなるのか」とさらに不安を感じるようになった。
医療機関にも相談し、整形外科、心療内科、脳神経外科を受診した。心療内科では不安感や息苦しさが強いときに抗不安薬を処方されたが、飲めば気持ちは一時的に落ち着くものの、今度は薬を手放せなくなることが怖く、根本的な解決にはなっていないと感じていた。
「何か根本的に体を整える方法はないか」と模索していたところ、知人から「カイロプラクティックで症状が改善した」という話を聞いた。整体や鍼灸院に通っても決定的な変化を感じられずにいたが、YouTubeで情報を集めるうちに、「自分の体の状態を根本から見直すべきではないか」と考えるようになった。これまでとは違うアプローチを試してみたいと思い、今回、来院を決意した。
頸部右胸鎖乳突筋の過緊張
第一頸椎右横突起にスポンジ状の浮腫
左仙腸関節の可動域制限
初診時の状態では、左の仙腸関節には明らかな可動域制限があった。体表温度検査では、上部頸椎と骨盤部に明らかに左右の温度の誤差が確認された。また第一頸椎右横突起と左上後腸骨棘上端内縁に強い浮腫が確認され、頚部右胸鎖乳突筋と腰部起立筋は過緊張の状態であった。
レントゲン評価では、腰の椎間板の段階は慢性的なD4レベルで重度の骨盤の傾きが確認された。首の椎間板の段階は慢性的なD4レベルが確認された。
初期集中期の段階では週2回のケアを提示したが、仕事の関係で週1回のケアから開始した。
2週目(2回目のアジャストメント)には、施術を開始してまだ間もないが、夜中に目が覚める回数がわずかに減少した。寝つきの悪さは依然として続いているものの、「昨日は少し長く眠れた気がする」と本人も小さな変化を実感していた。不安感や動悸は変わらずあるが、施術直後は体が軽くなる感じがするとのことだった。
10週目(8回目のアジャストメント)には、夜に寝つくまでの時間が短くなり、眠れないまま朝を迎えることはなくなった。途中で目が覚めても、以前よりも再入眠しやすくなってきた。不安感は日によって波があるが、動悸を感じる頻度が減少。頭痛も午後から夕方にかけて出ることが少なくなり、特に右側のこめかみの締め付け感が軽減した。
18週目(12回目のアジャストメント)には、睡眠の質が改善し、日中の倦怠感が軽くなってきた。朝の目覚めが以前よりスッキリし、午前中の集中力が向上。副鼻腔炎による鼻詰まりが軽減し、夜間の口呼吸が減ったことで、喉の乾燥感も和らいだ。腰痛についても、寝返りを打つ際の痛みが軽減し、横になることが以前より楽になった。
24週目(15回目のアジャストメント)には、不眠症はかなり安定し、寝つきの悪さや夜中に目が覚める回数が明らかに減少。便秘と下痢を繰り返すことも少なくなり、腸の調子が整い始めた。不安感やイライラを感じる頻度が減り、以前ほど小さなことでストレスを感じなくなった。
35週目(19回目のアジャストメント)には、睡眠のリズムが安定し、ほぼ毎日しっかりと眠れるようになった。動悸や立ちくらみの症状も大幅に改善し、仕事中に集中力を維持できる時間が長くなった。顎の食いしばりも緩和され、朝起きたときの顎の疲労感が減少。腰の重だるさも改善し、長時間座っていても違和感はなくなった。
現在は、ほとんどの症状が落ち着き、睡眠の質も安定しているが、健康維持のために定期的なカイロプラクティックケアを継続している。
今回の主訴である不眠症は、長年にわたって交感神経が過剰に働いていたことが影響していたと考えられる。特に、寝つきが悪く、中途覚醒を繰り返してしまうという症状は、交感神経の過活動によってリラックスできない状態が慢性化していた可能性が高い。
検査では、骨盤部と上部頸椎に強い反応が確認された。骨盤部と上部頸椎はどちらも副交感神経支配の領域となる。副交感神経にサブラクセーション(根本原因)があったことで、交感神経が過剰に働いた結果、自律神経のバランスを大きく乱していたと推察される。
不眠症に加えて、多岐にわたる自律神経症状が現れていた。午後以降に出る頭痛は緊張性の頭痛であり、交感神経が過剰に働いていたことで発症していた可能性が高い。便秘と下痢を繰り返すような症状も出ていたが、胃腸は自律神経の影響を強く受ける臓器である。
通常であれば、胃腸の働きは副交感神経が優位なときに活発となる。つまり、交感神経が優位に働いていると胃腸の動きは低下してしまい、便秘を引き起こしやすくなる。ただし、この状態が長期間続くと、人間の排出機能が過剰に働き、今度は一気に下痢となってしまう。このように自律神経の乱れがあることで、便秘や下痢を繰り返すという症状を引き起こしていたと考えられる。
人間の平衡感覚の大部分を司っているのは「耳」となるため、めまいのような症状は耳と密接な関係がある上部頸椎の問題であった可能性が高い。また、慢性的な副鼻腔炎もあったが「鼻」も上部頸椎とは密接な関係がある。
自律神経の乱れは、耳の内耳にあるリンパ液の増減や、体内の白血球(リンパ球や顆粒球)の比率にも関与しているため、その観点からもめまいや副鼻腔炎の要因になっていたと考えられる。また、副鼻腔炎による鼻詰まりは睡眠の質をさらに低下させる要因にもなっていたのだろう。
動悸に関しては、心臓などに何か器質的な異常が無かった場合には、迷走神経が関与しているケースが多い。迷走神経と上部頸椎は密接な関係があるため、動悸の要因にもなっていただろう。迷走神経は胃腸の働きにも関与しているため、便秘や下痢を繰り返すといった症状が出ていたことからも、動悸の原因は迷走神経への負担だった可能性が高い。
食いしばりの問題も交感神経が過剰に働いていたことが関係していると考えられる。交感神経が過剰になることで、体は常に過緊張の状態となってしまう。寝起きの顎関節周辺の疲労感があったことは、まさに睡眠中にも食いしばり続けていたことが要因となっていることを示唆しており、それが睡眠の質をさらに低下させることにも繋がっていた可能性もある。
腰痛についても、長年の骨盤の乱れによって腰部の神経に大きく影響していたと考えられる。寝返りを打つたびに痛みが出ることで睡眠の質をさらに低下させてしまい、深い眠りに入ることができない状態が続いていた。
本症例では、不眠症は単なる睡眠の問題ではなく、自律神経の乱れが深く関与していることが分かる。薬による一時的な対症療法ではなく、根本的な神経機能の改善を行うことで、不眠症以外にもさまざまな自律神経症状の改善に繋がったと考えられる。自律神経の問題にも、改めてカイロプラクティックの有効性が示された症例であった。
執筆者前田カイロプラクティック藤沢院前田 一真
1982年、神奈川県生まれ。シオカワスクール在学中から塩川カイロプラクティック治療室にて内弟子として学ぶ。塩川満章D.C.と塩川雅士D.C.に師事し、副院長まで務める。2023年に前田カイロプラクティック藤沢院を開院。一人でも多くの人にカイロプラクティックの持つ無限の価値を知っていただくため、カイロプラクターとして尽力している。またシオカワスクールでは現役講師を務めており、後任の育成にも力を入れている。