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自律神経失調症

自律神経失調症

60代女性
主訴
自律神経失調症
来院に至った経緯

3年前から自律神経失調症の症状を訴えていた。自律神経失調症の症状としては耳鳴り、耳の閉塞感、めまい、眼精疲労、ドライアイ、頭痛、睡眠障害、体のだるさ、ホットフラッシュ、足の冷えなど多岐に渡る。日によって症状が安定せず、日常生活での過ごしやすさにも影響している。

特にめまいや耳鳴り・耳の閉塞感が強く、低音な音がしており、音が聞こえにくいことが多い。耳鼻咽喉科などで検査をしたが異常がなく、耳の血流をよくする薬を処方されている。いつ耳鳴りやめまいが強くなるのか分からないため、いつも薬の手放せない状態が続いている。また、数年前から眼精疲労やドライアイもあり、目薬を常用している。頭痛も悪天候や肩こりがひどくなると強くなり、頭痛が出てしまうと、その日一日が動けなくなってしまうほどである。自律神経の問題や更年期障害の症状のひとつであるホットフラッシュにも悩まされ、突然額や背中に汗をかいてしまう。ホットフラッシュは特に、精神的にストレスを受けた時や、急いでいるときに起きやすいとの事。

睡眠障害も有し、睡眠も長くはとれず、寝つきが悪いか、寝ても真夜中に目が覚めてしまう状態である。40代から心療内科に通院している。精神的な問題なので安定剤や睡眠薬などを処方されており、そこから20年以上薬を服用している。最近、医師からの𠮟責によって余計に状態が悪くなり、自律神経失調症の状態がさらに悪化してしまった。そのため、来院の10日ほど前から睡眠導入剤の量が増加した。

さらに、30代くらいから腰痛や肩こりに悩んでいた。近所の整形外科で検査をしていただいたが、骨などに特に問題はないと診断された。電気治療器は気分が悪くなってしまうため、ウォーターベッドを受けたり、痛み止めの薬を処方された。しかし、一向に改善されなかった。手や足に軽度のしびれが出てきたため、少し大きな市民病院でMRIの検査(頸部・腰部)したところ、腰部の下方が狭くなっていると診断を受けた。同じように痛み止めを処方されたが、ここでもやはり改善はされなかった。ここ最近は右足の甲の痛みや右足の第一趾の痛みにも波及してきた。もともと冷え性もあり、夏場でも足は冷たい。家ではスリッパ着用。

あるサッカーチームを応援しており、定期的に見に行きたいという希望があったが、自律神経失調症のため、中々外に出たりと遊びに行ったりできていなかった。治療をするにも今まで接骨院、整体院、整形外科、心療内科などの様々な病院で診てもらったが、どれも改善しなかった。しかし、このままではさらに自律神経の状態が悪化してしまうと考え、ホームページで探していたところ、当院のホームページに行き当たり、来院の運びとなった。

初診の状態
  • 01

    左仙腸関節、左第一頚椎の可動域制限、浮腫感

  • 02

    左胸鎖乳突筋、両側の腰部脊柱起立筋の過緊張

  • 03

    右足の甲部のしびれ

経過と内容

通常、症状や身体所見でペースを決めるのではないが、レントゲン画像がなく、遠方からの起こしのため、まずは週2回からの施術から行うことを提案した。
初回のアジャストメントでは、アジャストメント終了時から様々な反応が見られ、アジャストメント直後には眠気があった。その数日後には右膝のあたりがジンジンと痛かったが、すぐに納まった。

3週目(4回目のアジャストメント)には、耳の閉塞感が減ってくると同時に、耳鳴りやめまいも軽減されてきた。また手足のしびれも薄れてきた。

4週目(6回目のアジャストメント)には、手のしびれは完全になくなった。足のしびれはまだ軽度残っている。

8週目(9回目のアジャストメント)には、全体に調子が良くなる。眼精疲労を最近強くは感じない。耳の閉塞感、耳鳴り、めまいは改善された。

9週目(10回目のアジャストメント)には、横浜へ遊びに行くことが出来たことで、本人も喜んでいた様子だった。睡眠状態も改善し、睡眠薬なしでも眠れる日が多くなってき。

10週目(11回目のアジャストメント)には、右足の甲のしびれも感じなくなり、肩や腰も調子よく動けるようになっている。この時点で頭痛の発作はほとんど出なくなっている。

現在はメンテナンスとして月に1回継続的にアジャストメントを受けている。現在まででホットフラッシュの症状もあまり出ていない。心療内科に行くよりも、ここ(当院)に来た方が心も安定するとの事。


考察

自律神経失調症といっても、その症状は多岐にわたる。耳鳴り、耳の閉塞感、めまい、眼精疲労、ドライアイ、頭痛、睡眠障害、体のだるさ、ホットフラッシュ、足の冷えといった症状は、自律神経の乱れが原因と考えられる。検査上では上部頸椎や骨盤に兆候が見られ、この部位は副交感神経領域である。

自律神経には交感神経と副交感神経の2つがあるが、検査では副交感神経支配である上部頸椎と骨盤部の反応が強く見られた。副交感神経が働いていないと、交感神経が過剰に働いてしまう。

耳鳴りや耳の閉塞感であるが、今回見られた耳の閉塞感というのは、難聴のひとつの症状である。耳鳴りや難聴の原因は、耳の問題と診断されることが多いが、ストレスなどの精神的な問題、生活習慣の乱れ、ホルモンバランスの乱れ、天候や環境の変化などの要因も考えられる。40代から精神疾患を患っていたため、精神疾患に対する治療がこれらを改善する対策法とされる。カイロプラクティックでは、身体の内側に問題の根本原因が存在していると考え、耳鳴りに対してアプローチをする。特に注目するのは「脳への電気信号」である。音は外耳から中耳、内耳を通じて脳に伝わる。外耳は音を集めて鼓膜を振動させ、中耳はこの音を内耳へと送る。内耳では振動が電気信号に変換されて脳へと送られ、この信号によって音が認識される。しかし、この伝達経路に異常があると、脳に正しい電気信号が届かなくなる。そして、この状態が続くと、脳が過剰に反応し通常は無視するような微細な電気信号までもが認識され、耳鳴りとして感じられるようになる。聴覚や平衡感覚を支配している神経は「内耳神経(第8脳神経)」と呼ばれるが、これは副交感神経支配の神経であり、副交感神経サブラクセーションによって引き起こされる。

めまいの原因は多岐に渡るが、一般的に内耳の障害、首の問題、脳出血など頭部の症状などが考えられる。耳鳴りや難聴と同じく、内耳へと繋がる「内耳神経」が関与する。人間の平衡感覚は内耳にある「三半規管」で維持されており、この部分はリンパ液で満たされているが、このリンパ液の量が異常に増加すると、体が動いていなくても動いていると錯覚し、めまいが発生する。今回も薬で一部は改善されていたが、根本的には改善されていなかったのだろう。

睡眠障害(不眠症)も発生していたが、交感神経が過剰な状態であったため、寝付くことが困難であったことが考えられる。自律神経のバランスが乱れたことで不眠症や冷え性を引き起こし、その状態が慢性化したことで感覚神経の異常をも引き起こしていたことで足の冷え性が発症していたと考えられる。

ホットフラッシュとは更年期障害に現れる症状であり、30代後半~50代の女性の50%以上が更年期症状に悩まされる。症状としては今回のように、顔のほてりやのぼせ、気温に関係なく汗が止まらなくなる。ホットフラッシュで悩む方の割合は更年期の6割以上に上る。通常はホルモン療法(HRT)によって女性ホルモン(エストロゲン)を補うが、乳がんや子宮頸がんの発症リスクが上がることも知っておかねばならない。カイロプラクティックでは交感神経・副交感神経のどちらが過剰であっても、ホットフラッシュになる可能性があるが、今回のように何らかのストレスによって発生するのは交感神経が刺激されたからであり、副交感神経が働いていないことが原因と考えられる。

以上のように、自律神経の乱れが原因である症状が多く観察されたため、副交感神経と交感神経を区別してアプローチした。今回は副交感神経領域を対象とし、アジャストメントを通じて交感神経の活動を抑えることを目的とした。臨床では、アジャストメントの効果を最大限に引き出すために、神経システムと椎骨を特定して評価する。

一般的に、自律神経の障害でカイロプラクティックの施術が繋がることは、現状あまり認知されていない。アジャストメントにサブラクセーション(根本原因)が取り除かれ、体の情報が脳へ届いた結果、自律神経のバランスが保たれることで症状の改善に至ったと考えられる。症状は多岐に渡っても、原因が特定されることで、一度に様々な症状を改善できたことで、交感神経と副交感神経のどちらにダメージがあるかを見分ける重要性を再認識できる症例であった。

岡芹 侑哉

執筆者OKA接骨院・鍼灸院・整体院岡芹 侑哉

1993年、埼玉県出身。柔道整復師・鍼灸師の免許取得。接骨院・鍼灸院・整形外科の研修後、接骨院を開業。塩川スクールにてトムソン教室、クレニオセラピー、上部頸椎ボディドロップターグルリコイル、Gonstead seminar修了。現在、塩川スクールの検査のインストラクターとしてカイロプラクターの育成に携わる。

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