シオカワグループ シオカワグループ

腰椎椎間板ヘルニアによる右脚の痛みとしびれ

腰椎椎間板ヘルニアによる右脚の痛みとしびれ

MRIなどで診断を受けた椎間板ヘルニア

20代男性
主訴
腰から右脚にかけての痛みとしびれ
来院に至った経緯

システムエンジニア(SE)として在宅で仕事をしている。業務のほとんどがパソコン作業であり、長時間同じ姿勢を続けることが日常的であった。しかし、特に腰痛を経験したことはなく、これまで身体の不調を意識することもなかった。

異変が起こったのは約1年前のことである。特に思い当たるきっかけもなく、突然右のお尻からふくらはぎにかけて痛みを感じるようになった。最初は一時的なものかと思い様子を見ていたが、痛みが継続したため整形外科を受診。MRI検査の結果、「腰椎椎間板ヘルニア」と診断された。医師からはリハビリとしてストレッチを勧められ、痛み止めの薬も処方された。これにより多少の緩和は見られたものの、痛みは完全には消えず、日によって強弱を繰り返していた。仕事中の座り方に気をつけたり、ストレッチを続けたりしても、根本的な改善には至らず、不安を抱えながら日常を過ごしていた。

そして今年のゴールデンウィークに入ると、痛みが突然悪化した。これまでの鈍い痛みとは異なり、灼けつくような強い痛みが右足に広がり、日常生活にも支障をきたすようになった。特に、背中を反らす動作をすると右足に鋭い痛みが走るようになり、これまで感じていなかった左足の甲にも痛みが出現した。さらに、朝起きた際、座った状態で足を伸ばそうとすると強い痛みを感じるようになり、動作が大きく制限されるようになった。

痛みが急激に悪化したことで、再度整形外科を受診し、改めてMRI検査を実施。しかし、診断結果は1年前と変わらず「腰椎椎間板ヘルニア」であり、処方されたのも前回と同様の痛み止めの薬であった。医師からは「引き続き経過を見ながら対処するように」との指示を受けたが、根本的な解決には至らず、症状の進行が止まらないことに強い不安を感じるようになった。

さらに、日常動作にも大きな影響が出始めた。歩くたびに右足まで痛みが走り、身体を前後に倒す動作も苦痛を伴うものとなった。仕事中も座り続けることが辛く、集中力の低下を感じるようになった。このままでは今後の生活や仕事に深刻な支障をきたすのではないかという焦りから、何か別の治療法がないかを模索し始めた。

そこで、インターネットで様々な治療法を調べる中で、当院の存在を知ることとなった。カイロプラクティックによる施術が、ヘルニアによる神経症状の改善に効果を期待できる可能性があると知り、少しでも痛みを軽減し、根本的な解決へと向かうため、一度診てもらおうと決意し、来院に至った。

初診の状態
  • 01

    腰仙部周囲にスポンジ状の浮腫

  • 02

    腰仙部の可動制限

  • 03

    腰部起立筋の過緊張

経過と内容

初診時の状態は腰仙部に明らかな可動域制限がみられた。
レントゲンでは、腰部がD3レベル、頚部はD3レベルと慢性的な段階と確認できたため、初期集中期の目安として週2回のケアを提案した。出張の関係で次回は1か月後となり、仕事の都合上で週1回のケアで開始した。

また、病院で撮影したMRIの水平面像では圧迫範囲が半分近いため、3か月以上の長期的なケアの必要性を伝えた。

5週目(3回目のアジャストメント)では、腰から右臀部は痛み無くなり、屈曲と伸展時に右下腿後面に痛み。歩行も問題なし。SLR(+、-)

12週目(9回目のアジャストメント) では、伸展時の右下腿後面に痛みは落ち着いてきた。

28週目(17回目のアジャストメント)では、日常生活や仕事では問題なくなった。屈曲時だけ右下腿に痛みはないが、突っ張り感がある。SLR(+、‐)

36週目(21回目のアジャストメント)では、屈曲しても問題なくなった。SLR(‐、‐)

現在は、症状はほぼ緩和したが、身体のメンテナンスとして定期的なメンテナンスを継続している。


考察

今回のケースでは、初診時に腰仙部の可動域制限が顕著であり、レントゲン評価でも腰部および頚部の椎間板がD3レベルと慢性的な状態であることが確認された。加えて、病院でのMRI画像から圧迫範囲が半分近くに及んでいたことから、3ヶ月以上の長期的なケアが必要であることを説明した。初期集中期では週2回のケアが理想的であったが、仕事の都合上、週1回のペースで施術を開始した。通常、慢性的な神経圧迫は短期間での改善が難しく、継続的な神経機能の回復が求められるため、施術頻度が低い場合はより長期的な視点でのケアが重要となる。

施術を開始してから、まず腰部および右臀部の痛みが消失し、歩行時の問題も解消された。しかし、屈曲・伸展時に右下腿後面に痛みが残存し、SLR(Straight Leg Raise Test)は陽性であった。この段階では、神経圧迫の軽減が進んでいるものの、依然として坐骨神経へのストレスが残っていることが示唆された。その後、伸展時の右下腿後面の痛みがさらに軽減し、症状が落ち着き始めた。この時期には、神経の修復が進み、炎症の減少に伴い痛みの閾値が上昇してきたと考えられる。

施術を継続することで、日常生活や仕事に支障がなくなったものの、屈曲時に右下腿の突っ張り感が残存していた。SLRの結果からも、神経の伸張耐性が完全には回復していない状態であることが推測された。この時期には、神経組織の修復だけでなく、柔軟性の回復や神経の適応が進行していると考えられる。その後、屈曲時の違和感も消失し、SLRは完全に陰性となった。これは、坐骨神経の伸張に対する耐性が十分に回復し、圧迫の影響がほぼ解消されたことを示している。この結果からも、長期的なカイロプラクティックケアによる神経機能の回復が確認できる。

今回のケースでは、慢性的な圧迫があったため、神経機能の回復には時間を要した。しかし、継続的なアジャストメントによって神経の流れが改善し、症状の消失に至った。神経の修復は一朝一夕に進むものではなく、特に慢性期のケースでは回復過程が数ヶ月に及ぶことが多い。神経損傷の再生速度は1日に0.3~1ミリとされており、今回のように長期的な圧迫があった場合、改善には最低でも3~6ヶ月、完全な神経適応にはさらに時間がかかることが一般的である。

現在、症状はほぼ緩和されているが、再発を防ぎ、健康な状態を維持するために、引き続き定期的なメンテナンスケアを行っている。カイロプラクティックケアを継続することで、神経機能の最適な状態を維持し、将来的な再発リスクを最小限に抑えることができる。この症例は、神経機能の正常化が長期的な健康維持に重要であることを示す良い例であり、適切な頻度でのカイロプラクティックケアの重要性を再認識させるものであった。

金城 寿生

執筆者塩川カイロプラクティック治療室金城 寿生

1989年、沖縄県生まれ。柔道整復師の免許取得後に上京。接骨院やクリニック勤務を経験。2022年東京カレッジ・オブ・カイロプラクティック(旧豪州ロイヤルメルボルン工科大学 日本校)卒業。塩川スクールにてGonstead seminar修了。研修を経て塩川カイロプラクティック治療室に入社。勤務しながら、インストラクターとしてカイロプラクター育成に携わっている。

pagetop