
”ランニングが徐々にできるようになって嬉しいです”
2022年11月頃、突然脚力が衰え始め、これまでジムで時速10kmで30分走れていた自分が、急に時速5kmで20分歩くと足裏からくるぶしにかけて痺れが出て、臀部やふくらはぎに張りが生じるようになった。そのため、歩き続けることができなくなり、日常生活に支障をきたし始めた。最初は単なる疲れや体調の不調だと思っていたが、明らかにこれまでと違う感覚だったので、すぐに病院で検査を受けた。医師からは「脊柱管狭窄症」や「下肢閉塞性動脈硬化症」の可能性は否定され、結局、原因がわからないままであった。
検査の結果、病院での対策方法が尽きてしまったため、次に試してみるべきは何かと思い、鍼灸治療を選択した。最初は半信半疑だったが、治療を受けた結果、症状はかなり改善し、歩行に関してはほぼ普通の状態に戻った。少しでも歩けるようになり、日常生活が少し楽になった。しかし、走ることについてはまだ問題が残り、足や臀部に張りが出て、無理をしても時速8kmで10分程度が限界となっていた。以前のように自由に走れる状態に戻すにはまだ時間がかかると感じ、もっと根本的な治療が必要だと考え始めた。
鍼灸治療の効果を実感したことから、血液の流れに関しては改善したが、もしかしたら神経の問題も絡んでいるのではないかという直感が働いた。そこで、神経に関する治療法をインターネットで調べてみたところ、カイロプラクティックが神経に働きかける方法として有効であることを知った。自分の症状にぴったりだと感じ、試してみる価値があると思い、当院への来院を決意した。カイロプラクティックがどのように神経にアプローチするのか、そして自分の体がどのように変化するのかに大きな期待を抱きながら、治療を受けることを決めた。
脊柱起立筋の緊張がとても強い
右の仙腸関節の可動域制限
腰椎5番周囲の皮膚が黒ずむ
腰部の皮膚乾燥
寝起きや歩行時に足にしびれとだるさを感じる
腰椎の椎間板はD5~6、そして頸部においてもD4~5と神経の圧迫はかなり慢性化している状態と言える。初期集中期として、最初の1ヶ月は週に3回を打診するも、経済的な面と身体的な面で週1しか来ることができないということで、まずは週に1回のケアでスタートする。
4週目(4回目のアジャストメント)において、最近悩んでいた、寝起きの鋭い腰の痛みが解消されていた。同時に、ジムや駅の階段の昇降がスムーズにできるようになった。仙腸関節の神経圧迫はまだ継続であるものの、仙腸関節の可動域制限はかなり取れてきている。神経圧迫はまだ確認できるため、同様の頻度でケアを継続とする。
6週目(6回目のアジャストメント)において、寝起きの腰痛、階段の昇降は継続で調子が良く、歩行もスムーズになってきた気がするとのこと。また、お腹の調子がこれまで、下し気味であったとのことであるが最近は落ち着いている。
13週目(13回目のアジャストメント)において、これまでで初めて10分間ランニングをすることができたと大変喜ばれていた。歩行の調子も良く安心している。仙腸関節のブレイクも落ち着いてきており、腰椎5番のブレイクの方が目立つようになる。第一頚椎のブレイクおよび、緊張も抜けてきている。
20週目(19回目のアジャストメント)において、ウォーキングは全く問題のない状態で、寝起きの腰も調子が良い。ランニングにおいては、10分以上になってくるとだるい状態が少し出てくるが、距離時間ともにどんどん軽快な時間が伸びていっている。現在はメンテナンスでケアを継続中。
本症例では、土台である骨盤の不安定さが招いた神経圧迫によって歩行困難が生まれてしまったと考えられます。
病院での精密検査をはじめ、考えられる病気に対する検査を当クリニックでおこなっても、起こり得る兆候はなく、原因不明でありました。
ですがカイロプラクティックの視点でいえば、レントゲンの評価をはじめとした検査を基にすると、土台である骨盤の不安定性によって、特に腰椎5番の椎間板に負担がかかり、神経圧迫が起こることによって生じたものであることは明白でありました。
椎間板の段階を見ると、神経圧迫が生じてから15年前後経過しており、長年負担がかかっていると推察できます。
神経圧迫が生じると、腰の状態や、足の状態が脳に適切に伝わらず、結果的に脳からの信号も伝わりにくくなるため、回復が遅れてしまいます。
骨盤部における神経圧迫は副交感神経という自律神経と密接に関係があり、それにより、末梢への血流が低下し毒素や疲労物質が排出されにくくなってしまいます。骨盤部、そして第一頚椎のアジャストメントにより、副交感神経が安定してきたことでふくらはぎのエリアや、臀部などの筋緊張が抜けやすくなってきたり、足全体にかかる負担が少なくなってきたことも症状の改善につながる要因だったのではないかと考えられます。
合併していた下痢についても副交感神経サブラクセーションの兆候で起こりやすく、自律神経の安定によって改善へと導かれました。
本症例は、長年解消されることなく、かつ原因不明であった、足のだるさ、それに伴う歩行困難が、土台が安定したことによって脳と体が連絡を正常に取ることができ、回復していった例でありました。
足がだるいからといって、足をマッサージしたり、温めたりするだけではなく、サブラクセーション(神経圧迫)を正確に見つけ出し、そこのみにアジャストメントをしていくことが非常に重要であるということがわかる良い例でありました。
今ではスムーズに歩行やランニングをすることができるようになり、趣味であるゴルフもたくさんされていて、生き生きとした姿を見ることができ大変嬉しく思います。
執筆者塩川カイロプラクティック治療室関野 貴友
1999年、大阪府生まれ。19才より東海大学トレーナー専攻及び東京衛生専門学校のダブルスクールを行い、共に優等で卒業。鍼灸あん摩マッサージ指圧師を取得。のちに睡眠専門治療室NEOCHIを開業。2023年よりシオカワスクールのインストラクターを務め後進の育成にも力を入れている。