セントラルハイスクールのシンディー・カーペンターの家での彼女の誕生会に招かれた時、そこにいたシーラ・マホニという女性が、来週は彼女の誕生日だということで、その日にデートをすることになった。

これが私の初めてのデートである。

聞くところによると、彼女はセントラルハイスクールでミスハイスクールに選ばれたらしい。私はまだ車を持っていなかったので、YMCAで水泳を教えている先生に車を出してもらうことを頼み、ダブルデートをすることになった。

私は早速、中国人留学生のイッポーワイに頼んで一緒に来てもらうことにした。水泳の先生は私が初めてのデートだと言うと、デートのマナーについて丁寧に説明してくれた。ドアをノックして母親が出てきたら，自己紹介をして10時頃には帰ります、と言いなさいとアドバイスされた。

彼女の家に着いて、ドアをノックすると、シーラ本人が出てきた。彼女に、「ホールドパンツオン（ズボンをしっかり握っていなさい）」と言われたので、なぜそう言われたのか分からなかったが、自分のズボンをしっかり握って、ドアの前で10分ほど待っていた。彼女が戻って来て、私がズボンを握っているのを見て、何をしているのかと尋ねた。

私は、彼女にズボンをしっかり握っていなさいと言われたので、そうしているのだと話したら、彼女は笑って、「それはスラングで、ズボンをそんなに早く脱がないで、つまり、ちょっと待っててね、という意味なのよ」と説明してくれた。とにかく英語がまだ分からない私にとってコミカルな経験となった。

私の2回目のデートは、ミッシェルという女子高校生とである。彼女は金髪で、見るからにアメリカ人という感じの女性だった。私が彼女の家に行くと、いきなり怖そうな父親が出てきた。彼は、私にどこから来たかを尋ねたので、日本から来ましたと答えたら、「わたしの兄は戦争で日本人に殺された」と言われ、デートどころではなくなってしまい、私は「失礼します」と言って帰ってしまった。

ミッシェルは毎日私の郵便受けに手紙を置いていったが、二度とデートする気にはなれなかった。

シンディー・カーペンターも不思議な高校生だった。学校の帰り道によく私のアパートに寄って、しばらく勉強しては自分の家に帰って行った。一緒に映画に行っても手を握るわけでもなく、本当に不思議な女性だった。お互いにシャイだったのかもしれない。彼女は後にアイオワ大学に奨学資金をもらって入学したそうである。

私の柔道の生徒の一人にマイク・ディメイという男性がいた。彼のガールフレンドの名前はシィアミアンと言い、チェリーという妹がいた。彼女はもうすでに結婚していたが、女の子3人でナイトクラブで歌っていた。家族は皆音楽家で、私をよく家に招待しては夕食をご馳走してくれた。チェリーの父親はスパニッシュで、母親はアメリカ人である。2人はもう離婚していたが、2人とも私をよくかわいがってくれた。

彼の女友達にダイアナという高校生がいた。彼女は高校生でありながら独立心が旺盛で、アルバイトをしながら高校に通っていた。どういうアルバイトかと聞くと、バーでゴーゴーダンサーとして働いているということで、一度見に行ったことがある。

彼女が住んでいるイリノイ州は18歳からバーに行くことができるが、私が住んでいるアイオワ州は21歳でないとバーに行くことはできなかった。それで20歳未満のパーマーの学生は、イリノイ州まで橋を渡ってよく飲みにきていた。ミシシッピ川を渡ると、もうイリノイ州である。

私はここでも働いていたので，車が無い時には大学の寮から歩いてこの橋を渡って行った。寒い日などはとても辛くて早く車が欲しいと思ったことが何回もあった。私はこの町のホテルでバスボーイとして働いたことがある。お客さんが食事をした後に、また次のお客さんのためにテーブルにフォークやナイフを置く仕事であった。私の給料はウエイトレスのチップの5％であるが、正直に申告するウエイトレスはなかなかいなかった。そのため給料が安く、ある時に、私がやめるというと、ウエイトレスの多くから「やめないでくれ、あなたは今までで最高なバスボーイだ」と言われた。

翌日からは、そのことがきっかけで、ウェイトレスからの私への収入が多くなったが、夏休みも終わり、大学に戻らなくては行けないことを告げると、皆喜んでまた待っているからいつでも来なさいと言ってくれた時には非常にうれしく思った。

この時、一生懸命にやればどんな職業でも一流になることを学んだ。ここでの教訓を活かし、翌年の夏休みの1ヶ月間、シカゴにあるナショナルカイロプラクティック大学の寮を借りて、ホリデーインホテルで皿洗いの仕事をすることになった。

夕方の4時から翌日の朝6時までが私の仕事の時間になった。夜中の12時頃になるとお腹がすくので、冷蔵庫から食べられるものを許可なく食べていたら、ある日から鍵がかけられるようになった。そして、料理長がおいしそうなステーキを私の前に差し出した。

「無断で冷蔵庫から盗んでは行けないよ。君は立派に皿洗いをこなしている。いつでもおなかがすいた時には私に言いなさい。私がおいしい食事を作ってやるよ」と言われた時には、一生懸命に仕事をすれば報われることを学んだ。