妊娠中から仙骨に激痛が走り、以降生理中にも激痛がある
第一子の妊娠中期に仙骨付近の神経か筋肉かわからないが、激痛がはしるようになってしまった。あまりの痛さに、歩行や動き始めが困難になることがありどのような体勢を取っても辛い。妊娠中であったこともあり、薬に頼ることもできず苦しみながら生活をしていた。出産を経て、一時的に楽になったと思ったら、産後半年後に再発してしまう。2人目の妊娠出産の際にも同じような痛みを経験し、仕事に復帰しデスクワークが続くと同じような痛みが出てきてしまう。生理周期に伴って痛みがくるような感覚があり、毎月この痛みが来るのかと思うと憂鬱な気分となってしまうと思っていた。本気でこれをどうにかしない限り子供の世話どころか自分の生活が危ぶまれると危機感を感じ色々とネットで調べていると、たまたま職場の上司が当院に通院していて”まずは行ってみたほうがいい”と紹介され来院を決意する。
左の仙腸関節にスポンジ状の浮腫
仙骨全体の浮腫感
左腰部起立筋の過緊張
生理に伴う腰痛
問診と検査から、左の仙腸関節の可動域制限と浮腫感が見られており、腰椎の椎間板は慢性化が進んでいる状態であった。椎間板のレベルで言えばD3~4に移行しているような状態のため、週1回のケアから進めていくことにした。
※仙骨の3番を中心とした浮腫が目立つが、左PIをアジャストメントすることでブレイクは落ち着き、浮腫感も落ち着いたことからPIを継続でアプローチしていくこととした。
初診から1週間後(2回目)の際には、ちょうど生理の周期を迎え、緊張していたが、以前のような生理に伴う仙骨の激痛は起こらず、程度がかなりおさまっていて驚いていた印象であった。
初診から5週間後(4回目)の際の生理周期でも仙骨の痛みはなく、座り姿勢での腰の痛み自体もかなりなくなってきていた。
初診から12週後(7回目)の際は生理の時には全く問題ないが、お子様の抱っこなどで腰を痛めた程度で、調子の悪いところが全くない状態になった
初診から23週後(10回目)の際は、生理に伴う仙骨痛は落ち着いており、徐々にエクササイズなど運動も取り入れられるようになった。座り仕事も順調に進んでいる。もともと仙骨にあった浮腫感もかなり軽減している。
現在も副交感神経領域に絞って、生理前後のタイミングで来院されメンテナンスを継続中。
今回の患者さまは生理に伴う仙骨の痛みを感じていらっしゃいました。その原因として考えられるのは自律神経の乱れです。
自律神経の乱れによって、女性ホルモンの分泌異常が発生してしまったと考えられます。女性ホルモンは、神経を通じて脳と卵巣がコミュニケーションをとることで、分泌量などをコントロールできるようになっています。
しかし、自律神経が乱れると、そのコントロールにも乱れが生じて本来のホルモン分泌よりも量が過剰になってしまうケースがあります。特にプロスタグランジンというホルモンが過剰になると、子宮を過剰に収縮させたり、腰痛を引き起こしてしまうと言われています。
また子宮周囲の血流不足も併発することがあり、血行不良による腰痛を引き起こすこともあるのです。
土台である骨盤が安定することと、副交感神経に関係する上部頸椎にアプローチしたことで、腰痛が寛解されたという例でした。
今回のアジャストメント部位は、骨盤と第一頚椎で、どちらも副交感神経のエリアとなります。
痛みを訴えるような症状であっても、上記のようなホルモンバランスや自律神経が絡んでいる場合には、痛みの場所に囚われすぎずに、アジャストメント箇所を特定していく必要があります。この患者様のように、副交感神経のみに絞ってアジャストメントをしていくことで、土台から安定し、かつ自律神経の安定が見られる良い例でありました。
執筆者NEOCHI関野 貴友
1999年、大阪府生まれ。19才より東海大学トレーナー専攻及び東京衛生専門学校のダブルスクールを行い、共に優等で卒業。鍼灸あん摩マッサージ指圧師を取得。のちに睡眠専門治療室NEOCHIを開業。2023年よりシオカワスクールのインストラクターを務め後進の育成にも力を入れている。